福島県内のヤマメ・イワナの渓流釣りはどうなっているのか(6.18現在)

6月16日、国と福島県は福島第一原発からの放射能汚染により、福島市内阿武隈川水系のイワナの採捕自粛要請(pdf)を発令した。すでに同水系のヤマメは採捕自粛となっている。これにより、福島市内の阿武隈川ではヤマメ・イワナの渓流釣りができなくなった。

6月17日、阿武隈川漁協に電話したところ、「アユからも1000Bq/kg超の放射能が出ている。阿武隈漁協の漁業権対象魚種はイワナ・ヤマメ・アユ・ワカサギ・ウグイ・コイ・フナ・ウナギだが、賦課金の支払いを拒否する組合員が出てきている」とのことだった。

いまだ阿武隈川のアユ釣りの解禁日の見通しは立っていない。釣っても食べられない魚を釣りたい漁協組合員はいないだろうから、賦課金を払いたくないのは当然ともいえる。阿武隈川漁協では、本年度分の年券は来年度も使えるように対応したという。

6月9日に『フライの雑誌』編集部が福島県庁水産課に取材した際、「ヤマメの採捕自粛を理由にした遊漁券の販売拒否は行き過ぎである」との返答だった。今回、あらためて阿武隈川漁協の関係者に対応を聞いた。すると「遊漁券を売らないことはない。しかし福島市内の阿武隈川河原で放射線を測ると、2.5μSv/hから3μSv/hの数値が出る」と困惑した様子だった。

3μSv/hといえば、法律で特定の人以外の立ち入りが禁止されている「放射線管理区域」の値をこえる数字だ。言うまでもなく、釣り人は一般に長い時間を河原で過ごす。つまり、遊漁券を売る売らないのレベルではなく、原発により汚染された一帯でのヤマメ・イワナの渓流釣りは、実質的にできなくなったと考えるしかない。

『フライの雑誌』最新第93号では〈東北へ行こう!〉という特集を組んだ。誌面では震災による地形の変化への注意を呼びかけている。たいへん残念で、本当に腹立たしいことだが、東電福島第一原発事故の影響を受けている地域で釣りをする際には、原発による放射能汚染への注意も呼びかけなければいけない。

放射性物質は雨水などによって川へ流れ込み、水底へ沈殿する。川や止水が放射能だまりになりやすいことは、チェルノブイリ事故のときの報告書にも記されている。私たちが行こうとしている釣り場には、知られざる放射能だまり─ホットスポットができているかもしれない。

行政が発表している放射能汚染のモニタリングポストには、釣り人が立ち入る林道、河原や川のなかは、ほとんど含まれていない。ふつうの釣り人はガイガーカウンターを携帯して釣り場に行かないだろうから(あ・た・り・ま・え・だ!)、釣り場がどれくらい放射能汚染されているかは分からない。周辺のモリタリング数値と地形や天候から、推理するしかない。

福島第一原発事故はいまも進行中だ。収束の見通しはたっていない。汚染はこの瞬間も進んでいる。充分に注意してほしい。

6月17日、私は『フライの雑誌』編集部を名乗って福島県庁農林水産部へ電話取材した。担当者の方が、魚の汚染についての情報をていねいに教えてくれた。ふだんは取材時に個人的な感情をだすことは控えているのだが、このときはあまりの深刻さに、思わず「原発やめましょう。これ以上釣りできなくなると悲しすぎますよ」と言ってしまった。

電話の向こうの担当者さんは、少し戸惑いながらも「そうですね」と言ってくれた。

Tight Lines!

ヤマメ、イワナ、ウグイの採捕自粛要請マップ(福島県庁)