栂岡　…ぼくらは子どものころ、アユや渓流釣りの方々に川で教育してもらいました。最近はそういう大人が少なくなった。人が人に興味を持たなくなったのかな。前は川で知りあって話をして、そのまま何10年もおつきあいが続いているという友だちがふつうだったのに。─でもぼくは期待もあるんです。最近になって、ぼくの仲間が自分の孫と一緒に釣りをできる世代になりつつある。かつてのアメリカがそうだったように、日本でも孫がおじいさんにフライフィッシングを習う時代になったんじゃないかと思います。

─　とすれば今は端境期なんでしょうか。

栂岡　隔世的に楽しめる時代になった気がする。親じゃなくておじいさんと、ひと世代飛ばしで川に入るんです。

高田　ルアーやフライが日本で始まったのは四代も五代も前じゃない。孫と川に入るのはこれからかもしれませんね。そういえば、私もこのあいだ、小学校一年生の孫と一緒にフライフィッシングをやったんです。…あれちょっと待ってくださいよ。息子、孫、息子、孫。あ、孫じゃないです、ひ孫だ。ひ孫と一緒にフライフィッシングをやったんです。

─　それはすばらしい。どちらへ行かれたんですか。

高田　山梨県の鹿留ですよ。

─　ひ孫さんはひいじいちゃんの高田弘之さんにフライフィッシングを教えてもらったんですね。うらやましいです。

高田　あっというまにコツを覚えちゃって、釣った釣ったなんて喜んでましたよ。

栂岡　子ども時代の体験が将来の素敵な釣り人を育てます。

山田　小さい頃にエサ釣りをやっている人の方がルアーもフライも覚えが早いですね。

高田　エサ釣りにはエサ釣りのよさがありますよ。いっぱい釣りすぎなければいい。この釣りはよくてこの釣りはだめなんてことはありません。小さい魚なら細い仕掛けで釣れば楽しいでしょう。

山田　フライフィッシングもね、もういちどジェントルマンの遊びだってアピールしたほうがいいのよ。こんなに釣ったぞ、どうだ、ではなくて。　…