おっさん通信 3月号

[おっさん通信 2014年2月号]から続く

〝これブログに書いたんだけどさ…〟を枕詞に、自分の書いたブログが読まれている前提で会話を始めたがるおっさんが、いまだにいる。おっさんはひまかもしれないけど、みなさんわりと忙しいんですよ。

ビル・ロビンソン急逝。 人間風車は僕らの心の中で回りつづける。

井の頭公園池かいぼりの「捕れた生き物分別」の内訳をいま知った。「観賞用の色ゴイ」は殺されて肥料。「黒ゴイ」(?)は「保護」されたとのこと。見た目が大事。

井の頭公園池のかいぼり。色のついたコイは虐殺。黒いコイは保護。ゲンゴロウブナは保護。ヒメダカは虐殺だったそう。むちゃくちゃが正義面してのし歩いた。シロクロつける理屈があれば、ヒトがヒトに対してジェノサイドを行うのもたやすい。無知と正義はいとも簡単にいのちを踏みつぶす。そして踏みつぶした当人は、むしろいいことをしたと思っている。無知と正義ほど怖いものはない。

みなさんから渓流の魚のいい写真ばかり見せられるので、SNSはからだにわるい。

「武田薬品では一切やっていない」。不適切なコーポレートガバナンスで頭を下げている真っ最中の武田薬品社長がNHK会長の不適切なコーポレートガバナンスをきっぱりと批判。こういうのをワロタっていうのか。

パチンコ店のネオンはなぜか必ず「パ」が消える。

パチンコ店のネオンはなぜか必ず「パ」が消える。ということで、パチンコ店のネオンでどういう「パ」が消えたらもっとも大変なことになるかというテーマを思いつき、頭の中で色んな店名の「パ」を消したら予想以上にくだらなくてがっかりした。「○チンコバンバン」「○チンコジャンボ」「ミスター○チンコ」「○チンコデルンダー」…。わたしいそがしいふりしてじつはひまなんだろうな。

本作りも手伝ってくれて、いつもよくしてくれている先輩が、「ホリウチくんもそういう立場なんだし、そろそろ敵を作らないで、みんなと仲良くした方がいいと思うな!」と、ニコニコしながら言ってきた。ほんとにわたしを心配してくれていたらしい。えー、自分じゃ丸くなってわりと周りとうまくやっているつもりだったのに。昔はともかく、先様がこっちをどう見てるかも置いといて、いまはそんなに〝敵〟いないと思ってたんだけど。先輩の言葉をありがたく胸にしまった。

「とっくに高校生じゃないくせにいかにも高校生風の制服を着てアイドルを僭称する二十歳すぎの若年増はチームに混ざってほしくないんだよう」と、隣のおっさんがさわいでいる。

深瀬に腰まで入った状態で靴底滑ってふくらはぎ攣って、カメラバッグを浮きにして三メートルくらい流れて走馬灯見た。カメラも竹竿も人間も無事回収。もう帰るべー。

さいきん自分がトシくったせいか、〝いろんな立場と考え方があるよね。〟なスタンスに落ち着いてきた。ゆえに、原理主義振り回す人もむしろなまぬるい眼で見られるようになってきた。にんげんだもの。

味は上々、とか言って喜ぶような話題ではないと思う。いろんな意味で。すごく複雑な利害と価値観がからみあっていて、ほどくのは並大抵じゃないっていうか、むりだから。でも世間一般からみればこういう書き方が受けるんだろうし、これ以上の興味もないんだろう。にんげんだもの。

政治家の「だれそれを支持する」とか、政党の「どこそこを支持する」とか、わりとかるく口にするひとがいる。おれはそんなこと言えないし、言ったことがない。おっかなくて、もう。

4月号につづく

葛西善蔵と釣りがしたい 堀内正徳=著(『フライの雑誌』編集人)
葛西善蔵と釣りがしたい
堀内正徳=著(『フライの雑誌』編集人)