放射能汚染は地球規模の最大の環境問題であるはずなのに、ふだんは騒がしい環境保護系の団体や、生物多様性大事の学者からも、原発事故を受けて「放射能汚染をゆるさない」的な声明が、ほぼ聞こえてこない。なぜなんだろう。こっちが知らないだけなのか。
昨日は国内の鳥類愛護団体(日本野鳥の会)へ電話取材した。「法律の関係で野鳥を殺して汚染程度を測るのは難しい。汚染の影響は現在調査中。科学的に対応したいので会としてまだメッセージは出していない。風評被害が起きては困る。自会のサイトで食べて応援キャンペーンを展開している」。
弁舌さわやかで対応も丁寧だったけど、先様が何を言ってるんだか理解できなかった。役人かと思った。鳥類保護団体が気にする風評被害ってなんだろう。食べて応援? さっぱり分からない。
釣り具の業界団体も、アウトドア用品メーカーも、放射能汚染問題には関わりたがらない。政府や官僚が汚染を直視したくないのはある意味分かる。でも自然が好きで自然でごはんを食べている民間の企業や団体や学者までが、権力の空気をうかがってなのかだんまりなのは、やっぱりおかしいと思う。
なかったことにできるならいちばんいい。でも目を背けても起きた事実は変わらない。そして今をなかったことにしたとしても、事故を起こした根本原因を放置すればきっと近い将来にもっとひどいことが起きる。
そうなれば、クジラの保護も野鳥愛護も希少種保全もキャッチ・アンド・リリースも、釣りも山登りもスキーもサーフィンも、サイクリングもジョギングもへったくれもなくなる。実際すでに放射能汚染のせいで、広大な地域に人間が立ち入ることすらできなくなってしまった。
まだ間に合う、次こそジ・エンドだと思いたいのだけれど。(堀内正徳/編集部)