神奈川県芦ノ湖のワカサギは、おいしいことで知られている。毎年秋には宮内庁へ献上しているのだと、芦ノ湖漁協は誇らしげに語っている。
たしかに芦ノ湖のワカサギは、水がきれいなためなのか、やわらかさ、香り、味ともに絶品だ。早期はカラばりで鈴なりに釣れる。湖上を渡る風に吹かれながらのボート釣りは、家族連れのレジャーにも最適だ。芦ノ湖漁協は近年ワカサギの繁殖に取り組んで成功をおさめていて、全国の漁業者からも注目されている。
その芦ノ湖のワカサギから、放射性セシウムが検出された。水産庁が7/28の「水産物の放射性物質の調査結果について」で発表した。
芦ノ湖のワカサギから検出された放射性セシウムは、71ベクレル/kgだ。水産庁はこれを暫定基準値以下だから〝安心〟だと言うだろう。だれだってそう思いたい。しかし芦ノ湖のワカサギが放射能に汚染された事実は変わらない。
「水産物の放射性物質の調査結果について」を見ると、わたしたちに身近な魚介類の多くの種から放射性物質が検出されている。放射性物質が検出されていない水産物を探す方がむずかしいほどだ。
たいていの人が、できれば今日も明日もずっと、たのしいきもちよい日々を送りたいと思っている。そのためにいろいろとがんばる。核は、そうしたあたりまえの人々の努力と未来を、一瞬にして無にしてしまう。
富士山をのぞむ高原の美しい湖にすみながら、芦ノ湖のワカサギは300km以上はなれた福島原発の事故により、放射能に汚染された。〝まだわからないんですか〟と、あんな小魚が私たち人間に教えてくれている気がする。
芦ノ湖のワカサギは、毎年10月1日に宮内庁へ献上されている。今年も皇室の皆さまは芦ノ湖のおいしいワカサギを召し上がるだろう。放射能に汚染されたけど安全で安心だ。
暫定基準値以下だから。