釣り具メーカーさんに〝ゲレンデ〟をつくってほしい。(長文です)

小社のような裏路地の釣り雑誌にも、各釣り具メーカーさんから春の新商品カタログを送っていただける。ずっしりと重いそれらのカタログを見させていただくひとときは楽しい。

フライフィッシングというごく狭い商圏であっても、新技術と趣向を凝らした多くの新商品に魅せられる。フライロッドやフライリール、最近とくに種類が増えているフライライン、便利になる一方のシンセティック・フライマテリアルの数々。タックルは年々進化してとどまることを知らない。とどまることは資本主義社会からの退場を意味する。メーカーが新商品の開発を続け、売れようが売れまいが市場へリリースし続けるのは当然のことわりだ。

で、思う。

これらのものすごく魅力的なお道具をそろえて、私たちはどこへ釣りに行けばいいのだろう。きらびやかなカタログのどこを開いても、釣りに肝心かなめな「どこでこれらの道具を使うのか」の情報は載っていない。少なくとも、フライフィッシング業界の各メーカーは、それを提示できていない。自分で探しなさい、ということか。

何年もフライフィッシングをやってきて、自分の好きな釣り場を知っているベテランは放置でかまわない。しかし初心者へ向けた道案内は、ほぼ無い。分厚い商品カタログの巻末に〈スクールを開催しています〉と案内するだけで(しかも有料高額)、人口が増えようはずがない。こんなことメーカーも充分理解していると思うのだがどうか。この先の人口減が見えている世の中で、実際のところ、釣り具業界は自分たちの行く末をどんな風に考えているのか。

いち釣り人として考えると、釣り人の人口が減るのはむしろ歓迎だ。釣りにまつわる諸問題は、釣り人が減れば解消する事柄が多い。1990年代の釣りブーム時と比較して、少なく見積もっても三分の二くらいにはフライ人口が減少したと思われる現在、全国各地の渓流と湖では、20年前よりはるかに快適なマス釣りが楽しめる。その分析は『フライの雑誌』第95号の署名記事「この20年間で日本のマス釣り場はどう変わったか」にくわしく書いた。

ただ同時に、こんなに奥深い生涯の趣味である釣りの喜びを、共にわかちあえる仲間が少なくなってゆくのは、これはとてもとても寂しいことである。人が減った方がいいけど減ると寂しい。そこは釣りというスペース消費型の趣味が抱えた二面背理である。おいしいものは誰かと「おいしいね」と言いあいながら、楽しくいただきたいと思う、私は。いつのまにかオッサンと呼ばれる年頃になった今は余計にそう思う。

そこで提案したい。誰でも身近に釣りに触れあうことができる気軽な釣りの〝ゲレンデ〟を、釣り具メーカーが自腹で確保してはどうか。既存の漁協にお伺いを立てずにすむ、釣り人が自主的に管理する自由な釣り場。夢がひろがる。

釣り場をつくり維持するには費用がかかる。一時期より落ちたとはいえ上場企業が集まっている釣り具業界だ。自分たちのめしのタネをまくことでもあるのだから、ここは釣り具メーカーの侠気(おとこぎ)に期待する。釣り具業界の本気(本気と書いてマジと読む)を結集すれば、子どもも大人も集まって、ワイワイと楽しめる釣り場を全国各地につくることくらい、たやすいことだと思うのだがいかがか。釣り場の運営で儲けようなんてしょぼいことは思わず、無償提供するくらいの気概がほしい。

未来を支える子どもたちにとっても大人にとっても、釣りは最高の環境教育の舞台になる。(『宇奈月小学校フライ教室日記』を読んでください) 海と川の釣り場マネジメントは難しいから、小さい池でいいです。

じつはこのあたり、ここ10数年で急成長している中古釣具販売会社さんは動きが速い。すでに自前の管理釣り場を複数持って集客している。私は釣り雑誌を発行している立場だが、勉強不足で釣りの業界事情にまったく疎い。よく分からないのだが、タックルベリーと釣り具メーカーって、ぶっちゃけ仲がわるいのだろうか。新刊書店とブックオフみたいな関係にあるのだろうか。協力したり情報交換したりはできないものでしょうか。どなたか教えてください。

フライの雑誌-最新第95号〈オトナの管理釣り場〉
宇奈月小学校フライ教室日記 本村雅宏著(富山県黒部市教員)