クロスオーストリッチとシマケンコイル

すでにご存じの方には今さらだろうが、〝シマケンコイル〟と呼ばれるリーダーの工夫がある。

これは『新装版水生昆虫アルバム』(2005年)の特別付録「シマザキワールド11」で最初に発表された、島崎憲司郎さんの〝フライフィッシングの引き出しのひとつ〟である。単純に〝コイル仕掛け〟とも呼ばれる。

島崎さんがイラスト図解した「シマザキワールド11」の〝シマケンコイル〟は発表当時、めざとい一部の釣り師から大注目を浴びた。じつはシマケンコイルは島崎さんの地元桐生の釣り仲間の間では以前から知られており、現場で活用されていた。渡良瀬川の大ヤマメをはじめ、中禅寺湖のホンマスでも多くの実績がある。

昨年開かれた「島崎憲司郎さんの実践キャスティング教室」(渡良瀬ネイチャリングアクト主催)では、島崎さん本人がコイルシステムを実際の川でレクチャーした。『フライの雑誌』編集部は当日の様子を撮影編集しており、動画を公開している。 >シマザキ・キャスト・プレビュームービー

素人仕事で不鮮明な動画でゴメンナサイ。だが〝タックキャストとコイルシステム〟〝ナチュラルドリフトするコイル〟などのカットを見ただけでも、『フライの雑誌』の読者のような釣りこんでいるフライフィッシャーには、これは使えるとピンとくるはずだ。

不肖私も「シマザキワールド11」でコイルの存在を知って以来、コイル仕掛けを常用している釣り師の一人だ。とりわけ繊細な釣りを要求される状況のときには欠かせない。開発者が同じだから当然ともいえるが、いま注目されているフライ、クロスオーストリッチとの相性も抜群によい。

コイル仕掛けは、ウキにフライをぶらさげてアタリをとるよりも、はるかに高感度だ。そして〝フライフィッシングっぽい〟。日本では昔からフカセ釣りは玄人好みの釣り方として知られている。好みは人それぞれだが、フカセ釣りの一種といえるコイル仕掛けを使いこなすのは、何となく楽しい。

一昨日、島崎憲司郎さんと竿師の中村羽舟さんと、赤城山麓の管理釣り場フックで釣った。ひと足先に朝から釣り始めていた私は、第90号で紹介した通りのクロスオーストリッチ#16とコイルを使って、調子がよかった。ホクホクしていたが、後から来られたお二方は、私などとは釣り師としての血液組成が違ったことは言うまでもなく、すこしがっくり。

ことに名物の赤城おろしが吹いてくると、生半可のキャスティング技術ではラインをコントロールすることすらできない。その点、桐生のお三方はからっ風の釣り場でもまれた独特のキャスティングで・・・と、これはまた別の話題である。

とりあえず、一昨日に撮影したシマケンコイルの現場写真を下に紹介する。ちなみにこれは私の場合の仕掛けです。

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プレゼンテーションして流れに乗った状態。オレンジ色がコイル。フライラインからコイルまで60cm。コイルが40cm。コイルの先にエクステンションとして4Xが半ヒロ、ティペット0.6号が2ヒロ。フライはクロスオーストリッチ#16。ウェイトはスレッド代わりのワイヤーのみ。(第90号のワイヤーボビンの記事を参照)

仕掛けがナチュラルドリフトしている。流れはフライに影響していない。ティペットをしずしずと引き込みつつクロスオーストリッチが沈んでゆく。
ストライクの瞬間。マスがフライをくわえて反転したのでコイルが伸びている。アタリはコイルが止まる、ツンと沈む、揺れるなど様々。コイルのおかげで魚がフライをくわえてもほとんどテンションがないためにフッキング率がとても高い。ここでアワせれば、マスが水中でギラギラギラッ。

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