フライの雑誌-第36号

フライの雑誌第36号
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Shimazaki World 3

単行本『水生昆虫アルバム』はなぜ発行がおくれているのか
島崎憲司郎

本誌創刊号から第23号まで連載された「水生昆虫アルバム」をまとめた単行本「水生昆虫アルバム」の発行が大幅に遅れている。一体どうしたというのだ!

この本の発行を待っている方々なら誰もが思っていること。しかし、島崎さんも本誌編集部もけっして仕事をさぼっているわけではない。理由はちゃんとあるのである。で、その理由をご本人から直接語っていただこうというしだいである。

税込価格1,250円


INDEX

009 シマザキ・ワールド・ 単行本「水生昆虫アルバム」はなぜ発行が遅れているのか 中沢孝
016 忠類川にて 備前貢
026 日本釣り場論 河口湖漁協は、なぜ飛躍したのか 中沢孝
032 釣り場時評 日本のフライフィッシャーは、どのような釣りをし、どのような釣り場と魚を望んでいるのか 古田充夫・水口憲哉
041 秋から冬に使うフライ、ベスト3 編集部 吉岡俊一 青島芳直 青木隆 川野信之 米田賢治 野中角宏
050 優しき水辺 斉藤幸夫
052 スタンダードフライ・タイイング図説 番外編 接着剤で作るフライタイイングの楽しみ 備前貢
060 隣人のフライボックス 田中典康さんのフライボックス
065 極北の夏 地球でいちばん穏やかな土地 中野正貴
068 盆の釜 角敬裕
074 ロッド・ビルディング雑記 笛巻き 宮坂雅木
078 街中の野性・ 哀しき釣り人 東幸成
086 子どものフライフィッシング 子どもたちがフライフィッシャーになるには何が必要か 本村雅宏
091 河口湖のニジマス釣りの基礎知識 いよいよこれからシーズン・イン大減水の恩恵 遠坂毅
093 ふらいだ・ばーちゃる劇場 チーカのホーリはスーマのカオリ 毛針田万作
094 多摩川水族館 ’96水中日誌 中本賢
096 群上からの手紙 勇吉のいさむ爺 谷口宏次
098 フィールド通信 編集部
102 サケ一辺倒から脱却 水産庁北海道内水面政策のリストラに注目 平田剛士
106 出没地帯 青木文明 最近の熊に関する新聞記事 編集部
110 芦澤一洋さん逝く さようなら、芦澤さん 小川元利
114 スタンダードフライ・タイイング図説 コンパラダン ソラックス・ダン 備前貢
116 トラウト・フォーラム通信 TF事務局
117 ノルウェー最北部、フィンマルクのサケ 中野正貴
124 INFORMATION 編集部
126 読者通信 編集部

内容紹介

フライの雑誌第36号-01
フライの雑誌第36号-02
フライの雑誌第36号-03
フライの雑誌第36号-04
フライの雑誌第36号-05

秋から冬に使うフライ、ベスト3
吉岡俊一 青島芳直 青木隆 川野信之 米田賢治 野中角宏

11 月以降となると、特殊な釣り場を除いておおむね全国の釣り場の鱒類は禁漁となる。そして、釣り人にとって長くつらい冬の季節がやって来る。しかし、黙って待つだけしか方法はないか、そんなことはない、そんなことは出来ない、それが釣り人である。今ではあたりまえになったコイをドライフライで狙う釣りも、シーズン・オフを乗り越えたいという思いから始まり、結果的にフライフィッシングの世界を大きく広げたのである。人は苦境に陥ったときこそ新境地を開拓する大きなチャンスを手に入れる、ということなのかもしれない…。というわけで、各地の「シーズン・インを待ってられない方々」に、実際のところ秋から冬はどんなフライでどんな魚を釣っているのか紹介していただいた。

スタンダードフライ・タイイング図説/番外編
接着剤で作るフライタイイングの楽しみ
備前 貢

昨年、ニューヨークをはじめアメリカ東部のフライショップをおのぼりさん丸出しで色々と回ってみて、何よりも驚いたのはソルトウォーターの道具とコマーシャルフライの充実度でした。もちろん、大型店ではフロリダや、クリスマス島などなどに遠征する人達のための、ターポンやボーンフィッシュの道具もありましたが、やはり何といってもその大半はノース・イースト地方の代表的ターゲットとなるストライパーや、それに次いで人気のあるブルーフィッシュ、さらにはボニート、アルバコアと呼ばれる、へんな言い方ですがカツオやマグロにサバの模様が入ったような巨大なサバの仲間らしいいわゆる青物に対するものがほとんどで、例えばかの聖地キャッツキル・エリアの玄関口にあたるロスコーという山あいの小さな街に並ぶ2軒の大きなフライショップでも、ビーバーキル川やバテンキル川の当たりフライに負けないくらいの量のソルト・ウォーター用フライが売られていて、ニューヨークでは、淡水用の道具は申し訳程度に置いてあるだけ、ほとんどソルトウォーター用という店も何軒かあったくらいで、当地でいかにこの釣りがポピュラーかをつくづく痛感しました。

で、そんな中僕が最も興味をひかれ、かつ興奮したのが、ノース・イーストのソルトウォーターで主に使われている種々のストリーマー群でした。

忠類川にて 備前 貢 一ノ尾大介
忠類川に着くと、さっそく釣獲調査区間より下流の国道に架かる橋の下のプールを見に行った。橋の上からのぞき込むと何十何百のカラフトマスが手に取るように見えて、たまらない気分。「シロザケも昨日よりだいぶ遡って来てんのとちゃうか…」一ノ尾が指差す流心付近をよく見ると、確かにそこかしこにシロザケの姿が見えた。僕らが忠類川を訪れた九月初旬は、それ以前に遡上していたカラフトマスに混じって、ちょうどシロザケがちらほらと遡り始めた、まさにそのときという状況だったそうだ。「こら昨日より釣れそうやで…」「たまらんな、ホンマ…」一ノ尾と顔を見合わすと、二人とも忠類川で初めて釣りをした昨日のことを思い出してクククと笑った。

子どものフライフィッシング 連載(1)
子どもたちがフライフィッシャーになるには何が必要か
本村雅宏

これまで、数年にわたって、学校教育にフライフィッシングの考え方や方法論を適用してみた。

ご存じのむきも少なくないと思うが、今や環境教育は時代の寵児である。あるいは、世紀末の空気がそうさせるのか、生き残りをかけた課題との認識すらあることに驚きさえする。同時に難題を抱えている。学校はそうした環境との調和を第一義に考えてこなかったのである。

宮沢賢治の時代、科学は自然とより深く共鳴するための方法論や知識の総合的な構造であったと、僕には思える。ところが、科学の単純で明晰な分析的合理主義ばかりがいつのまにか科学の全体に取って代わられ、自然の表情は微細だがひどく平板なものになってしまった。そのことに、ようやく今頃になって、多くの人々が気づき始めた。どうやら僕らは科学が自然を乗り越えてしまう方法だと勘違いしていたのだと。

学校は多分にそうした限定された科学に荷担していたのだろう。僕自身、僕の中にいまだ自然を調伏しようとする列島改造的な巨大事業の成功に踊る自分を発見して、忌まわしく思いながらも、施された教育が根深く息づいているのを感じている。

そうしたものからの脱却にフライフィッシングという形の科学は実に絶妙な場所を提供してくれた。フライフィッシングの体験から得られる深い洞察は、まさしく教育が次の新しいパラダイムにむかう指針となるに違いないと、かなり多くの人が認めてくれるように思えるのだ。事実、いろいろな場所で、より深く自然を味わうためにフライフィッシングで学ぼうとする試みがある。

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