北海道へ行ってきました

この土・日は一泊二日で北海道へ行って来た。「フライの雑誌」次号特集の取材である。

フライロッドを持たないで北海道へ行くのは、じつは生まれて初めてだ。旭川の空港へ降りてからも、いつもなら巨大なロッドケース(通称バズーカ砲)が食い込んでいるはずの肩の辺りがすかすかして、どうも落ち着かない。致命的に大きな忘れ物をしているような感じだ。釣り竿がないのに私は何をしに北海道へ来たのだろうという不安にかられる。仕事しに来ました。

取材は地元のフライマンたちのご協力のおかげで実りあるものとなった。今回の特集は、絶対に「フライの雑誌」でしかやらない(やれない)内容になるのが現段階ではっきりしている。東京へ帰って来たのは昨夜遅くだ。このところの強行軍で身体はしびれたようになっているけれども、頭の芯は妙にさえざえとしている。私の手元に集まってきてくれた多くの情報をどのように誌面に反映させようかと、楽しく悩んでいる月曜日の朝である。

今回も札幌のフライマンが行動を共にしてくれた。彼は私と同い年ではあるが、電気の通じていない山奥に生まれたために、離乳食がエゾジカだった。以来、北海道のうまいものをひたすら体中に詰め込んで、中年になった今では体重が100キロを超えている。「単位はトン」だそうだ。庭先の川のイワナをおかずとし、裏山のヒグマを相撲の相手とした少年時代のくせで、今でもヒグマを見つけるとつい本能的に追いかけてしまう。彼がどたどたと追いかけるとヒグマは喰われると思うのか、あわてて逃げるらしい。どっちがクマだか分からない。

今回彼との会話でもっとも盛り上がったのは〈理想の女性像〉だった。銀河鉄道999のメーテルが理想と言い切る彼に「あんなネジとバネのどこがいいのか」と言うと、「機械かもしれないけど人間以上に人間の心を持っているんだ。ネジって言うな」と反論された。「ハクション大魔王の最終回では泣きまくった」と体に似合わないことを言うので「ナウシカでも泣いた」と私が返すと、彼も大きく頷いた。そして二人ではからずも『王蟲との交流』(ランラン、ランララ、ランランラン…)を合唱してしまい、かなり気持ち悪かった。数年前にもたしか同じ内容の会話をした気がする。まあいいか。