幸子の幸はどこにある。/高木ブー。

友人に教えられて、青梅市商店街振興事業の第20回「青梅宿アートフェスティバル2010」というものへ行った。青梅へは釣り以外の用事で来たことがない。JR青梅線青梅駅近辺の青梅街道沿いが、屋台やらソーラン踊りやちんどん大会などで大にぎわいだ。

お目当ては、あがた森魚さんのライブである。開始時間の少し前に会場へ着くと、民家の裏の駐車場にビール瓶の箱を積んで、10畳くらいのステージをつくってあった。ステージの背景は民家の裏窓だ(写真参照)。窓にはカーテンをひいてはあったが、ライブが始まってたけなわの頃、家の住民が何かのはずみに窓からひょいと客席へ顔をのぞかせたら、ウケちゃうんじゃないかと心配になった。それじゃあまるでドリフではないか。

世界唯一のフライフィッシング専門月刊誌「FlyFisher」誌さんの付録DVDに、「ドリフチェッカー」という看板連載がある。こまかーく虫を分類するオタッキーさはすごい。でもDVDの中で「あ、ドリフが来たぞ。」と、立松和平ばりの朴訥な声でナレーションされるのには、違和感を覚える。いま40歳前後の世代にとって、ドリフといえば『8時だョ!全員集合』のザ・ドリフターズである。DVDを観ながら、高木ブーがインセクトネットに入ったのを一瞬にして連想し、(そんなことあるはずないでしょ)と、毎回いちいち自分で突っ込むのがめんどくさいのである。毎回だ。

あがた森魚さんのライブはものすごくよかった。こんなに素晴らしい、熱いライブを無料で見せてくれる青梅市に最敬礼だ。あがたさんの艶やかな震える声を客席最前列で浴びながら、漫画誌『ガロ』で、あがたさんが映画『オートバイ少女』の連載をしていた頃─もう16年も前になるらしい─を思い出した。当時ぼくは20代で中央線ライフにずぶずぶだった。あんなことしたりこんなことしたりした。愛は愛とて何になる。幸子と一郎ままよとて。きもいぞオヤジ。

あがたさんは来月に新アルバムを2枚同時リリースする。タイトルは、〝俺の知らない内田裕也は俺の知ってる宇宙の夕焼け〟と、〝誰もがエリカを愛してる〟だそうだ。あんまりと言えばあんまりなタイトルだ。「2枚同時なんて、60過ぎてやることじゃないと思いました」とステージで笑っていた。あがた森魚62歳。すげえ62歳だなあ。内田祐也買わなくちゃ。

ライブが終わって青梅駅までの帰り道、いいものを見せてくれた青梅市に感謝の気持ちを表現しようと、商店街で食べ物をあれこれたくさん買いこんだ。帰りの中央線で周囲の迷惑を顧みずにぱくついた。だんごとかお菓子とかシュークリームとか。買い食い大好きだ。

帰ったら、締め切りが真っ黒な口を開けて待っている。3杯飲んだら地獄行き。お涙ちょうだい、ありがとう。