河口湖へ行った。

有名ポイントの河口湖ロイヤルホテル前は連休中とあって、家族連れや少年らのバス釣り人でいっぱいだった。観光立町をうたう富士河口湖町は大にぎわいで結構なことだ。

湖岸に降りてみて驚いた。ブラックバスの死体が波打ち際に累々と連なっている。まるで死体置き場だ。どの魚もすでに死んでから一週間以上経過している。目玉がえぐれたやつ、腹がガスでパンパンにふくれたやつ、ひれが全部溶けてダルマみたいなやつ…。当然腐臭もひどい。それらの死魚が寄せてはかえる波にゆらゆら揺れている。写真を撮る気にもなれない。バス釣り師たちは足下に転がっている死魚を避けるようにして湖岸に並びルアーを投げていた。哀しいのはそんな状況の中でも彼らが投げるルアーにバスが次々と釣れて来ていることだった。頼んで魚を何匹か見せてもらうと、明らかに放流モノで何度も釣られて口元がボロボロになった個体ばかりだった。

河口湖は日本で唯一、釣りに税金をかけている釣り場だ。富士河口湖町の遊漁税は、河口湖漁協が特別徴収義務者となって釣り人から税金を徴収している。そして河口湖漁協は執行部の内紛、乱脈経理を指摘されての県からの指導とトラブルが尽きない。遊漁税の導入時、河口湖町税務課の担当者は遊漁税が実現する「よい環境の河口湖」をこう説明した。「護岸には花がいっぱいあって、正面には富士山がある。トイレは水洗式でいつもきれいだ。トイレがきれいなら使う方も気持ちいいですよ。そういった素晴らしい環境の中で釣りを楽しんでいただきたい。そうすればまた河口湖へ行こう、と言っていただけます。」(「フライの雑誌」第55号47頁より)。遊漁税の導入から7年、河口湖は「よい環境」になったのかどうか。

河口湖は特定外来生物法の施行後は特例許可を申請し、「公認のバス釣り場」を観光の目玉として宣伝している。管理釣り場なら管理釣り場でいいから、きちんと管理したらどうか。放置された死魚が転がる水辺で子どもに釣りをさせられない。