もう去年の出版物になるが、毎日コミュニケーションズから出た隔月刊誌『+DESIGNING』の08号がとてもいい。デザインに関わるあれこれを毎号特集していくこの雑誌の、この号の特集は「めくるめく本の世界」。装丁、カバー、文字組、カラー、製本知識、具体的なデザインワークまで、特集やるんだったらこれくらいやらないと、といった記事のラインナップと執筆陣でひじょうに密度が濃い。
デザインを旗印にした雑誌は、とかく作り手側のマスターベーションが先走って読みづらく、というより<読めない>エディトリアルに陥りがちだが、『+DESIGNING』は内容の充実とともにシンプルイズベストな見せ方もうまく、永久保存しておきたくなる雑誌のひとつである。編集者の本作りに対するていねいな姿勢が読み手に伝わってくる雑誌はそうそうない。志は伝わるのである。
こういう良心的な雑誌に出会うと、世の中で言われる出版不況って、だからなに? と言いたくなる。届けたい人がいて受け取ってくれる人がいれば出版は成り立つ。カネをもうけたい人は出版業なんか関わらないで、他の仕事をしたほうがいい。少なくとも私はそう思う。