『釣道楽』(つりどうらく)創刊号を読んだ。

予定日から十月十日遅れての創刊号だそうだが、よくもまあそれだけ遅らせただけのことはあると思える内容の充実ぶりだった。

 北海道のナチュラリスト雑誌『RISE』をご存じだろうか。豪華な写真と奥深い洞察力、目をみはる実証主義で、知る人ぞ知る伝説となっている雑誌だ(いまはお休み中)。『釣道楽』はその『RISE』に創刊から関わった編集者が、15年の時を経て個人的な思い入れたっぷりで作った21世紀版「北海道の釣り・野遊び道楽誌」だ。

 このご時世だから情報はいくらでも転がっている。あふれる情報を取捨選択し独自の色を付け、読者の心象に何かしらの記憶を創造するのが雑誌の仕事だ。その点、『釣道楽』の誌面には、たとえ誰かが真似をしようと思っても真似できない一種の強情さが漂っている。同じくマニア系雑誌を作っている同業の立場からすると、「あなたも好きだねえ」と肩をもみもみしてあげたい。
 
 フライマンの視点で言うと、『釣道楽』92ページからの「パワードライ・フライフィッシング」の記事は必読である。折しも『フライの雑誌』第81号ではイトウの特集を組んだばかりだが、この「パワードライ」はまさにそのイトウを、しかも超大型のイトウを選んで釣ることのできるまったく新しい釣法だ。ここ10数年試行錯誤すること自体を勇気を持って楽しんで来たと語る筆者のペンが熱い。
 
 間違いなくそこでしか読めない記事というものがひとつでもあれば、その雑誌は存在する価値がある。『釣道楽』の今後も楽しみだ。

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