守らない人々

西武の石井一久投手は、昨夜の登板前に「今夜はまかせてください。」と言い残してマウンドに立ち、言葉通りに先発の役割を果たした。石井一はあのやる気のなさそうな緩んだ口元が昔から苦手で、木佐彩子アナを孕ませた時点で大キライになったのだが、このように大事なときに自ら課した約束をきっちり果たしてくれると、思わず好きになっちゃいそうである。迷惑ですか。

というのも世の中には約束を守らない人々がめずらしくない。幸い『フライの雑誌』の寄稿者さん方は本当にまじめで人間的にもきわめて素晴らしく、編集部がお願いした締め切り日はたとえ天地がひっくり返ろうと、ぜったいに死守してくださる方ばかりだ。先だっては、風邪による40度の発熱をおしてまで締め切りに間に合わせてくださった方もいらっしゃって、心から感謝した。こちらももっとがんばらなくちゃ、という気持ちになる。魚心あれば水心というじゃないですか。ちょっと違うか。

零細版元である我が社は直取引させていただいている釣具店さんも多い。だから昨今の釣り具業界の不況はよく分かる。そんな状況でもまじめにお取引してくださっているお店がほとんどだが、なかにはそうでないお相手も、いらっしゃる。具体的には、約束を守らない人々といえる。いつも顔ぶれがきまっているし、数が少ないから際立つ。さらに言えば、なぜか傍目ではそこそこ流行っているように見えるお店が多いのも不思議だ。だったらどうして約束を守ってくれないのかと、彼らの行動心理を推しはかるのはもちろん楽しいことではなく、無意識の内に誌面作りへかすかな歪みが生じてしまわないとも限らない。とりあえず『フライの雑誌』次号編集の佳境にある今は忘れてみることとする。

さて、メジャーリーグに行きたい若い才能の足を引っ張り、狭小な了見を露呈しまくっているニッポン・マイナーリーグだが、今年の試合自体は面白い。セリーグでは巨人と中日のどちらが上がってくるのか。レギュラーシーズン第1位以外のチームが日本一になる不条理が今年もつづき、こんなんじゃクライマックスだけやればいいじゃん、というわけのわからないことになるのか。個人的には投げても投げても打たれる守れないエース上原と、口元は緩いが約束はきっちり守る種馬、石井一久の直接対決をぜひ見たい。

球児、お前はよくやったよ。