なんかメラメラしてきました。

20年来の年上の友人と吉祥寺で会った。改装なった「いせや」本店へ先週出かけ、ことのほか気に入ったのでまた行きたくなったのだ。公園口で待ち合わせ、いせやの前にちょっと一軒ということで、友人がさいきん通っているという「カッパ」へ入る。串一本90円均一という分かりやすさ。サラリーマンでごったがえす店内の雰囲気は、新宿しょんべん横町か。

ここ数年、町歩きにごぶさたなので、たまにこうして知らない店に入るとうれしい。とはいえこの店は、隣の客との距離がすこし近すぎる。今日の気分的にはいまひとつなので、早々に出た。向かったいせやはあいかわらず、スモークマシンを炊いたように店内に煙が充満している。店に入って10秒で、コートから髪の毛からパンツの中身まで焼き鳥くさくなった。いせやだからよし。

いせやを出たあとは友人に連れられて、公園口近くの「LOVE&BOOK バサラブックス」へ。2006年開店ということで、私は今日までその存在さえ知らなかったのだが、ニューウェーブ系の古本屋なのらしい。店に入って棚を眺めたところ、古本マンガに関しては、70年代〜80年代の匂いを必要以上にまき散らしている品揃えだ。内田善美とか鈴木翁二とか高橋葉介とかデロリンマンとか、一昔前の私の本棚を公開されているみたいでかなり微妙な気分。どんな人がやっているのかと店員さんを観察したら、30代はじめくらいかと思える若さで、マッシュルームみたいなヘアスタイルに、いかにもな眼鏡をかけておりオシャレ極まりない。レジなんかレジじゃなくてノートパソコンだった。今風だなあ。

値付けについては、あすなひろしの『青い空を、白い雲がかけてった』が二巻で400円というひどい価格。いっぽうでガロ系の初期単行本が4000円。『宝島』創刊号は400円。『マリファナ・ハイ』が800円で、初期『月光』が1000円。まったく根拠が分からない。可哀想なあすなひろしは友人にむりやり買わせた。いずれにせよ(面白い店だとは思うものの)、『月ノ光』とつげ忠男の隣に、バイブレータやらコンドームやらといった、毒々しいアダルトグッズを平然とチンレツする<LOVE&BOOK>のセンスには、いせや帰りのアラフォー親父は到底ついていけない。原宿に「コンドマニア」ができたばかりのころ、通りの向こうの看板が視界に入っただけで赤面したのを思い出した。もう恥ずかしくて恥ずかしくて。おれ純情だから。

店を出てから友人に、「ああいう商売を吉祥寺の駅前でやっていて成り立つんですかね。」と、答えようもない質問を投げかけてみた。業界系に勤めているその友人は、フライフィッシングの雑誌なんか作っている私よりも、若者事情にははるかにくわしい。すると友人いわく、
「意外と、若い女の子なんかが〝あたしサブカル好きなんです、教えてくださーい〟とか、店員さんに言ってるのかもしれないぜ。〝だったらまずは『牧歌メロン』からかな〟とか言ったりして。」
うーん、それは果てしなく許せない気がする。
「なんかメラメラしてきましたよ。」
と言ったら大ウケした。