『そいつは納得できん』/単行本『カブラー斉藤の本』の進行状況をお知らせします

カブラー斉藤氏(以下敬称略)のweb連載『そいつは納得できん』は、昨年4月以来まったく更新されていない。担当者としてはまったく納得できん状態が続いている。2年以上も前に発表した単行本『カブラー斉藤の本』企画も、じつはあまり進行していない。しかしいまだにどちらにも時々ぽつりぽつりと、読者の方からの問い合わせをいただく。これだけ停滞しているのに本当にありがたいことだが、ディレクターとしては胸が苦しい。

そんなわけで昨夜、ふとカブラー本人に電話して、「なんか腹たってきたんだけど、色々いったい、どうなっているんですか。」と、きつ〜く、問いただした。とはいえあまり追いつめると、また以前のようにぷっつり連絡を絶たれて雲隠れされても困るので、〝ちょびっときつめ、そこそこしっかり〟程度にとどめておいた。なんて面倒なんだ。(『フライの雑誌』関係者にはこういう面倒系の方が多い。)

するとカブラーは、めずらしく殊勝に、「あい。わかってますよ。」などと言う。そしてあっさり話題を変えて、「じつはこのところ、さらにボラ釣りにはまってしまって・・・」とつづけた。「例の場所へ毎週通ってる。ユスリカの新しいパターンで60オーバーを釣ったんだけど、ウチの風呂場でトド級を解体すると、頭はでかいし骨は硬いし、血とウロコが飛び散って大変なことになって、どうのこうの。。。」と、多少興奮気味に語りだした。ボラ釣りに夢中になっているために、私の催促などはどうでもいいらしい。

たしかにカブラーは『フライの雑誌』最新83号で、最近の自分のボラ釣りについて、独特のカブラー節でしつこく語ってくれていて、原稿の仕上がりも、読者からの評判もいい。こういう〝追求モード〟に入っているときのカブラーは、放置しておくのがいちばんである。放置しておけば、常人ならアホらしくて呆れてしまうような、極北の境地まで突っ込んでくれる。そうすれば、カブラーの原稿はもっともっとすごくなるかもしれないのである。

人にはそれぞれ、神様から与えられたこの世の中での役割というものがあるらしい。とすれば、カブラーが一般社会の常識に背を向けて、品川運河のくさ〜いボラ釣りにひたすら執心できる、そういう環境を保証してあげることは、この世の中に生まれてきた私の役割かもしれないと思う。なぜなら、世界にフライマン多しといえども、『フライの雑誌』などという妙な仕事に人生かける物好きは、あらゆる意味で私くらいしかいないだろうからだ。

「・・・わかりました。じゃあ、webも単行本も、ボラ釣りが一段落してからでいいですよ」。私は(この台詞、もう何十回言ったかなあ)と思いながら電話のスイッチを切った。

というわけで、カブラー斉藤のweb連載『そいつは納得できん』の更新、ならびに単行本『カブラー斉藤の本』の完成までには、もうしばらく時間がかかりそうです。たいへん申し訳ありません。