中村智幸氏の新刊紹介

昨年発行したフライの雑誌社新書『イワナをもっと増やしたい!―「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法 』は、おかげさまですこぶる評判がいい。日本に生息するイワナ類を最新情報に基づいて整理し、貴重なイワナを守りつつ気持ちのよい渓流釣り場をつくっていくためのアイデアと実例が満載されている一冊だ。

このような「イワナ本」は、今までなかった。地味ではあるが発売以来、お届けするべき方の手へ少しずつ確実にお届けできている実感がある。現在各地の渓流で試みられている渓流魚の人工産卵場造成は、著者の中村智幸さんが日本で初めて開発した注目の技術であり、一章をあててくわしく紹介している。渓流を愛するすべての方が必読。渓流釣り師の書棚にならべたいエッセイとしてもおすすめだ。

中村智幸さんの新刊『守る・増やす渓流魚―イワナとヤマメの保全・増殖・釣り場作り』(水産総合研究センター叢書)を紹介する。本書は漁協や行政、研究者が対象の技術書であるが、文章はやさしくレイアウトも整理されているので一般の釣り人でもよく理解できる。とくに興味深いのは、第2部「渓流魚を守り楽しい釣り場を作る新しい方策」だ。水産庁が提唱している『渓流域のゾーニング管理』について、各地の実例を挙げて分かりやすく解説している。

残念ながらいまの日本では、釣り人が釣り場のデザインに直接関与することはできない。渓流釣り場の管理者は漁業権を申請して認可を受けた内水面漁業協同組合である。しかしほとんどの内水面漁業協同組合は職業的な漁をしておらず、組合員の高齢化などで経営は苦しい。本書には釣り場をとりまく法律的背景と、漁協と水産行政との力関係も解説してあるので、釣り人の立場から釣り場作りへなんらかのアプローチをしていく際には頼りになる虎の巻となるだろう。

ぜひ『イワナをもっと増やしたい!』と併せ読むことをおすすめする。

中村智幸氏著書 Amazon