漫画家いましろたかし さん ロングインタビュー
話題のマンガ『原発幻魔大戦』
ぼくたちは永遠に釣りができるわけではない。
もう原発はやめなさい。原発の負けです。
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『フライの雑誌』編集部より
◆東電福島第一原発の爆発から2年がたちました。壊れた原発からはなお放射能が放出されています。多くの被害者が住み慣れた家をとつぜん追われ、苦しみつづけています。放射線量の高い地域では、子どもたちは外で遊ぶことができません。未来の私たちにどのような影響があるか誰にも分かりません。
◆本稿の初出は季刊『フライの雑誌』第98号(2012年11月10日発行)です。掲載時には釣り人のみならず、釣りをしない方々からも大きな反響がありました。震災から2年の今日、いましろさんのご了解の上で〈いましろたかしさんロングインタビュー〉を全文公開します。
◆いま政府は、せっかく止まっている全国各地の原発を再び動かそうとしています。私たちはまた同じ愚を繰り返すのでしょうか。(2013年3月11日)
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日本釣り場論70
●いましろたかしさんは1986年に商業誌デビューした人気マンガ家だ。マニア級な釣り好きとしても知られている。いましろさんは2011年6月、それまで『コミックビーム』誌に連載していた釣りマンガをとつぜん中断。〝反原発マンガ〟と称した新連載『原発幻魔大戦』を始めた。
●第1話はいきなり〝ドッカーン〟という原発の爆発で始まる。次のページでは主人公サトーくんが額にたて線を垂らしながら「関東はもう終わってしまった…」とつぶやく。以降はほぼ現実とリアルタイムで日本政府、官僚、マスメディアその他もろもろを真っ向から批判する。官邸前の反原発デモに出かけるサトーくんの行動は、漏れ聞く最近の作者いましろさんの日常と重なる。
●これまでいましろマンガは一般には脱力系だとか私漫画系と評されることがあった。対してこの『原発幻魔大戦』は社会派バリバリで一直線に熱い。「いましろたかし」が『原発幻魔大戦』に向かう、その深層と真相について聞いた。もちろん釣りのお話も。(『フライの雑誌』編集部)
いましろたかし 漫画家。1960年高知県生まれ。1986年「ビジネスジャンプ」でデビュー。社会の中で〝生きづらい〟人々をリアリズムの視点で描く独特の作風で各界に熱烈なファンが多い。単行本に『初期のいましろたかし』、『デメキング』、『釣れんボーイ』、『化け猫あんずちゃん』、『トコトコ節』、『いましろたかし傑作短編集』、エッセイ『グチ文学 気に病む』、『引き潮』など多数。
福島第一原発近くの川ではもう釣りが
できないなんて信じられない。せめて
魚たちが命をつないでくれていれば…。
(いましろ)
なんの罪もないのに地獄へ道連れ
─ 事故直後にいましろさんが電話で「原発の近くの川の魚や虫、植物は、みんな死んじゃうのかなあ」とおっしゃった。何も生き物がいなくなった土地のイメージが頭の中に広がりました。
いましろ 福島第一原発近くの川へ釣りに行っていた釣り人は、「もうあの川では釣りができないのか」とは信じたくないだろうと思うんです。福島の川で遊ばせてもらっていたぼくは、事故の発生から一年半以上たっても信じられない。まだ川で魚が命をつないでいてくれていたら救いはあるんだけど、一〇〇年、二〇〇年という単位で生き物が種をつなげられるかということですよ。
─チェルノブイリ事故の汚染では魚たちに様々な異変(注1)が観測されました。パイクの卵の皮が異様に厚くなったとか、コイの奇形発生頻度が高まったとか。
いましろ 遺伝子操作には放射線を使うのだから当然です。ヤマメが健康にでっかく育ったとか、サクラマスがみんなメートル級になってたくさん戻ってくるとか、そういうオチになってくれるならいいですけれど。
─ 『原発幻魔大戦』の第3話に、かわいらしいタヌキやクマ、魚、トンボやカメが平和に笑っている絵に「動植物はかわいそうだなあ…。なんの罪もないのに地獄へ道連れだよ…」という台詞がついたコマがありました。私はあそこで泣いてしまった。
いましろ 動植物のことを考えると何も言えません。動植物は本当になんの罪もないのに放射能まみれにされた。人間には因果応報の物語がある。でも動植物は何もわるいことをしていません。国と東電にはまず事故を起こした責任をとってもらいたい。責任をとれないなら責任をとれませんと言わないといけない。
釣り業界にはがっかりだ
─ 『原発幻魔大戦』ではマスメディアへの批判も軸になっていますね。いましろさんは釣り雑誌をよく買っているそうですが釣り業界の対応をどう見ますか。
いましろ 釣り業界と釣りメディアにはがっかりです。だれもなにも言わないじゃないですか。雑誌もメーカーも言わない。「この川のアユは安全、大丈夫、食べて応援しよう」と根拠もないのに雑誌で言われても、ちょっと待てと思いますよ。釣り雑誌やテレビに出てくるメーカー絡みの釣り人も、震災前と同じことを言ったりやったりしている。有名な釣り人の○○○○も言わない、××××も言わない、△△△△も言わない。もうがっかりですよ。(注2)
フライでもバスプロでも船釣りでも、「○○さんは釣りが上手だ」とヒーロー視されていた影響力のある有名釣り人が沈黙している。自分のポジションや営業範囲から出ないのがいいとは、ぼくは思えない。事実を知っているのに黙っていることは、知らない人をだますことになります。
一部の釣り人に「放射能に汚染されていてもどうせキャッチ・アンド・リリースで食べないんだから関係ない」と言う人がいる。そういう話ではないんですよね。ぼくは騒いで釣りに行けばいいと思うんです。
─ 「騒いで釣りに行く」とはどういうことでしょう。
いましろ 「キャッチ・アンド・リリースするから釣りを認めてくれ」とお願いするその前に、「なんてことをしてくれたんだ」と怒る。その上で「おれたちはまだそれでも釣りをしたいんだ」と言わないと、筋が通らないと思う。それを個人の単位で言っても勝てる相手ではないのは分かっているんだから、釣り具メーカーなり釣り界の有名人なりが先頭に立つしかないのに、それをやらない。ぼくはもう正直、来年から釣り具を新しく買う気がしないんです。
─ いましろさんは毎年最新のアユ竿を楽しみに買っているそうですね。
いましろ 新しいアユ竿は新しいパソコンと同じで明らかに性能がいいんです。こういうことになるともう釣り具は一切買いたくない。まあ買いますけどね(笑) でも東レの会長が原発維持派だと聞くと、自分はもう東レの糸は買わないと思う。(注3)
「リリースするから釣らせてくれ」と言う前に、
「なんてことをしてくれたんだ」と怒る。その上で
「おれたちはまだそれでも釣りをしたいんだ」と
言わないと、筋が通らないと思う。 (いましろ)
汚染された魚を釣るのは忍びない
─『気に病む』(注4)を『ウフ.』に連載中の頃はずいぶん釣りに行ってましたね。
いましろ あれは完全に現実逃避でした。それにちょうどアユ釣り一辺倒からフライフィッシングを始めようとしていたときで、うまくいかなかった。フライを引っ掛けちゃうとか、風が吹くとラインが飛ばないとか、なにこれってくやしくて(笑)。あの頃はフライに燃えていたんだ。
─ そのわりに魚はたくさん釣っていたようです。しかも関東の近場の渓流でいい釣りをして…。
いましろ いやいや、ぜんぜん釣っていませんよ。ティペットは5Xだし。
─ 原発事故以降は釣りに行く回数はどうですか。
いましろ 激減です。気分の問題ですもの。丹沢のヤマメからセシウムが出た(注5)と聞けば釣るのが忍びないです。奥多摩だってそう。丹波川のアユからセシウムが出ている。ぼくはたまに丹波川のアユを釣って食べるのが大好きだったんです。NHKのテレビ番組で多摩川を紹介して「きれいな川ですね」と言っていた。釣り人も画面に出ていて「ニジマスが釣れました」と言ってたけど、「そのニジマス、線量計で測ってみてくださいよ」とテレビの前で嫌がらせしたくなった。
─ 機器の検出下限を下げれば放射性物質は検出されるでしょうね。
いましろ 原水爆実験の影響で「福島事故の前でも測れば放射能は出たんだから大丈夫」と言う人がいるでしょう。事故の直後はぼくは「大丈夫」という言葉を信じたかった。でもそうじゃないのはすぐに分かった。ぼくは1960年生まれで、当時は世界中でいちばんガンガン原水爆実験をやっていました。でもそのころと今はケタが違う。
もし50年後になんの問題も起こっていなかったとして、「あいつがマンガで言っていたことはウソだった」とぼくが言われたとしても、それでいいです。ガレキ処理の問題にしても、疑わしいことはしない、今はそれを原則にしておくべきだと思います。多摩川下流の土からだって放射性廃棄物レベルの放射性物質が測定されている。あれどうするんでしょうね。…ところで、ご地元のオイカワは元気?
─ はい。浅川のオイカワはよく釣れています。
いましろ それが救いです。オイカワはウグイより引きが多彩ですよね。ウグイは一直線だけどオイカワはローリングしたりするから楽しい。オイカワは好きな魚です。
「流れ」を自分なりに編集したかった
─ 『原発幻魔大戦』は早々に単行本化され、連載誌『コミックビーム』9月号の表紙にもなりました。漫画家さんでは、山岸凉子さんが原発を扱った旧作「パエトーン」が話題になったり、萩尾望都さんが単行本『なのはな』を出したのが話題になりました(注6)。『美味しんぼ』でも汚染と食べ物の関係をとりあげました(注7)。
いましろ 大御所が扱ってくださるのはいいことだと思います。震災前と同じことやってるマンガ家はバカですよ。直接的に描かなくても匂いすら出てこないのではだめです。
─ 『コミックビーム』での連載の途中で原発事故があったわけですね。
いましろ それまでは釣りを題材にしたマンガを描いていたんだけど、40ページくらい描いたところで原発が爆発しました。ぼくは最初「なにも言えない」と思った。「大したことはないんじゃないか、収まるんじゃないか」という願望があったし。「やばかったけれどギリギリセーフでした」というオチを期待してたんだけど、次々と裏切られていったわけです。「だめだ日本終わった」と。終わるんだったら、記録をしておこうと。
─ なるほど。
いましろ 情報が多いし展開が早いから、どうしても目の前のトピックにとらわれてしまう。その流れを自分なりに編集したかった。その編集の方法が稚拙で未熟だとすれば仕方ないですが、描いたものには責任を持たなくてはいけない。
もし50年後になんの問題も起きていないとして、
「あいつがマンガで言っていたのはウソだった」
と言われても、それでいいです。(いましろ)
─ テーマがどんどん大きくなっていきますね。「反原発」から「反原発・反TPP」(注8)、国際政治(注9)も加わった。
いましろ 話が大きくなるのは最初から分かっていたんです。このマンガでは数カ月単位で世の中に何が起きたかを記録している、その「流れ」を見てほしい。だからどうしても「実録」的な作りをするしかなかったんです。
─ 主人公のサトーくんは今までのいましろさんの作品にも何回か出てきていますね。ぼーっとパチンコしたりとか。
いましろ サトーくん(注10)もまさか原発が爆発するとは思っていなかったんです。爆発したら今まで通りにはいかないでしょう。
─ いましろさんは過去作でたくさんのキャラクターを作ってきた中で(注11)、なぜサトーくんを選んだんですか。
いましろ マンガなので多少通俗性をもたせなくてはいけないのですが、そのあたりはやってみないと分からないことです。このテーマでほかにもっと完成度の高いマンガを描いてくれる人がいたらぼくはいつでもやめますよ。
今の若い子には政治的なことはキモいって言われちゃうんだけど、伝わらないのも理解できるんです。だって原発が爆発した後も、テレビではお笑い番組をふつうに放送している。あれを見ていたら、ああ笑っていていいんだと思います。同世代で話題にならなければ、それは「ない」のと一緒になる。
「一般の多数者が勝つ」ということ
─ 「週刊誌を一人でやっているつもりで描いている」と『原発幻魔大戦』のあとがきに書いています。
いましろ それはぼくのやり方ですよ。福島から原発避難している人々をマンガで描く方向もあるんだろうけれど、ぼくにはできない。ぼくにはジレンマがあるんです。今回福島第一原発が事故を起こした。でも、事故を起こしていなかったら日本はどうなっていたんだろう。この狭い国土に原発を百基くらい作ってしまうかもしれない(注12)。どっちもだめでしょう。だから今回の事故はある意味では〝運命〟である。だったら前を向くしかない。
─ これまでのいましろマンガの作品の裏には一種の破壊衝動のようなものを感じる時がありました。
いましろ 破壊衝動はありません。でも願望はある。それは一般の多数者が勝つ、ということ。そうしたらこの反原発マンガも広く支持されると思う。だってピンチ、ピンチ、危機の連続で謎が謎を呼んで、なんとか最終的に原発とTPPを止めたとなったら起承転結になる。今起こっていることは全国民が命がけの超一級のサスペンスなんですよ。
─ いましろさんのデビュー作『ハーツ&マインズ』(注13)で社会から孤絶している主人公が部屋で膝を抱えて「戦争と原発が頼みの綱だ…」とつぶやくシーンがありました。
いましろ あれはチェルノブイリ事故の後だったからブラックジョークで描いた。そもそもぼくが原発に反対する一番の理由は、これだけの被害を出してだれも責任をとれない。避難者が数十万人もいるのにその人たちに向ける顔がないですよ。だったらもう原発はやめなさい。それがぼくの理屈です。原発の負けだと思う。
─ いましろさんは、私小説に対応しての〝私漫画〟作家として位置づけられていた時期があったと思います(注14)。ご本人の中で変化はありますか。
いましろ 僕の中では変わりません。基本的にぼくが思うことは他の人も思うだろう、と思う。─もちろんそうじゃないことも分かった上で言っていますよ。
原発とTPPに関しては、常識的に考えてこの問題はこう解釈するべきだという自信がぼくにはあるんです。でも真っ向から対立する意見もあって世界観が切れているのが一番の問題なんです。それでもなおかつぼくには「絶対に向こう側には行かない方がいい」という自信がある。そこが溶ける瞬間があるんじゃないだろうかと期待しているんです。これはパワーゲームです。
これだけの被害を出して誰も責任をとれない。
だったらもう原発はやめなさい。
原発の負けです。
釣り場があれば、釣らなくてもいい
─ 今後のマンガの展開はどうなりますか。
いましろ マンガに描かれる現実がよくなってほしい。なんでみんな黙っているんだろう。分からないからだろうか。全部分からなくてもいいと思うんです。政府はうそつきだ、マスコミはひどい、それだけでいいから怒るべきだとぼくは思います。
問題が顕在化していて、敵もなりふりかまわず攻めてきている。間合いがつまっているんです。それなのにこっちがノーガードなのが分からない。ほらパンチ飛んできてるじゃん。なんで気づかないのって。TPP決められたらおわりだろうね。外資に川を買われちゃうんじゃないか。自分たちの釣り場がなくなるかもしれないんですよ。
─ 釣りばかり行っているマンガ家のヒマシロタケシ先生が主人公の『釣れんボーイ』(注15)で、「神サマ、悲惨な目には遭わせないでください」と祈る初詣のシーンがあります。同じモチーフが他の作品にも登場します。あの「悲惨な目」の中身はなんですか。
いましろ 基本的には「最悪さえ避ければいい」というのがぼくのスタンスです。釣りができなくなるのは最悪じゃあない。でも原発事故で浜通りの川がつぶれたのは、最悪です。ひとりの釣り人が死んだのとは意味が違う。大水で川が荒れたって数年後には魚は戻ってくるかもしれませんが放射能はそうではない。
─ 原発事故で自然のかけがえのなさを思い知りました。
いましろ 釣りでいちばん大切なのは釣り場です。極端な話ですが、釣り場さえあれば、釣り人は釣りに行かなくてもいい。だってぼくたちだって永遠に釣りできるわけではないんですから。いつかは釣り場に行けなくなる日が来る。
何十年かたった後、その頃には川のかたちは変わっているかもしれないけれど、ぼくが立っていた同じ川で、だれかが釣ってくれればいいじゃないかと思います。次の世代の釣り人に釣り場を引き継いでいければ、それでいい。
あなただってそのうち竿を持てなくなる。でもだれかがオイカワを釣っていてくれればそれでいいじゃないですか。原発事故を起こした時代に生きている十字架をすべての釣り人が背負って、次の世代へ釣り場を引き継いでいくことです。S川ででかいブラウン釣って喜んでいるのもいいけどよく考えよう、真柄くん(笑)(注16)
(2012年10月8日収録)
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『フライの雑誌』編集部による本文解説
注1) 淡水魚の異変 『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉) BOX02 21ページ参照。いましろ氏はご自身で購入してくださっていました。感謝です。
注2) 有名な釣り人 収録時にはすべて実名でした。
注3) 東レの会長 株式会社東レ 代表取締役会長 榊原定征氏「既設原発については、徹底的な安全チェックを行った上で国民不安を払拭し、安全性が確認できた設備については地元住民の合意を前提に逐次稼働させる。」(経済産業省ウェブサイトより)
注4) 『気に病む』 いましろさん初のエッセイ単行本『グチ文学 気に病む』のこと。『ウフ.』誌(マガジンハウス)に連載されていた。タイトル通りご本人の芳しくない体調と仕事の先行きへのグチが全篇に渡って書き連ねてある。いましろマンガのファンには必読の一冊。
注5) ヤマメからセシウム 酒匂川水系皆瀬川のヤマメから37ベクレル/㎏(2012年2月) ※〈淡水魚の放射能汚染まとめ〉参照。
注6) なのはな 3・11以降に『flower』誌(小学館)へ掲載した連作短篇をまとめた単行本。〝「あの日」から、私は胸のザワザワが止まらなくなった。〟(オビに寄せた作者の言葉)
注7) 美味しんぼ 「東北被災地篇」。2011年9月「ビッグコミックスピリッツ」掲載。
注8) TPP 環太平洋戦略的経済連携協定。「平成の開国」とも呼ばれる。民主党政府(当時)、大手マスコミはTPP推進。
注9) 国際政治 戦後日本の政治の最大のタブーが「米国からの圧力」であるとする、『戦後史の正体』(孫崎享)が20万部のヒットとなっている。『原発幻魔大戦』第2弾にいましろ氏と孫崎氏との対談を収録。
注10) サトーくん 引用コマでYシャツを着ているサラリーマンがサトーくん。
注11) たくさんのキャラクター いましろマンガの特徴のひとつは強烈なキャラクター造形にある。複数の作品に同じキャラクターが共通して出演することがある。サトーくんはどちらかというと地味で目立たないキャラクターだった。
注12) 原発を百基 「原発には核廃棄物の問題もある。だけど廃棄物の処理の目処がつけば原発を動かしていいかといえば、そうではないと思う」(いましろ氏)
注13) ハーツ&マインズ 単行本『初期のいましろたかし』(小学館)で読める。
注14) 私漫画 『原発幻魔大戦』がダイレクトに政治問題を扱っている「社会派マンガ」であることを意外だと評する声もある。しかしデビュー当初から一貫するいましろマンガの大きな主題は、内なる自我と世間との軋轢であると言える。その意味ではいましろ氏の「私」は常に外を向いている。
注15) 『釣れんボーイ』 「コミックビーム」誌連載をエンターブレインから2002年に単行本化。全49話800ページ超で電話帳より厚い。主人公のおにぎり頭の漫画家、ヒマシロ先生は渓流のヤマメ釣り、アユ釣り、イカ釣り、フライフィッシングなどを楽しむ一方で、妻との関係、仕事の将来など鬱々として満たされない。ひとりごとを言いながらハエ(オイカワ)釣りに興じていたヒマシロ先生が夕暮れの川辺で「ダメだ おいちゃんなんだか淋しくなってきちゃったよ…」と、傍らの白サギにくしゃくしゃの泣き顔を見せる第21話は秀逸。
注16) 真柄くん 『朝日のあたる川』(フライの雑誌社刊)著者の真柄慎一氏のこと。真柄氏がいましろマンガのキャラクター「チバちゃん」にそっくりなことから、いましろ氏に編集部がカバーイラストを依頼。真柄氏本人との三者面談の結果、快諾していただいた。
『原発幻魔大戦』 ビームコミックス/エンターブレイン刊 2012年2月発行/税込693円/ISBN978-4047278387
表紙のオビ文「いましろたかしが描く3・11以降、怒りと恐怖と慟哭の日々!」。裏オビは「釣り人たちの日常を淡々と描いていた、いましろたかし。だが、3・11以降の政府、メディア、官僚、財界の余りのデタラメぶりにいてもたってもいられなくなってしまい、連載内容を突然、大転換!! 漫画を通して普通の生活者の目線から、原発そしてTPPに異議を申し立てた! さらに実際の国会では、いかなる状況になっているのかを訊くため、現役国会議員・田中康夫氏にインタビューを敢行!!」。単行本『原発幻魔大戦』第2弾「首相官邸前デモ編」は2012年10月発行。
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※本稿初出:季刊『フライの雑誌』第98号(2012年11月10日発行)
※聞き手・まとめ:『フライの雑誌』編集部 堀内正徳
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フライの雑誌社では、ここに来て日々の出荷数が増えています。「フライの雑誌」のバックナンバーが号数指名で売れるのはうれしいです。時間が経っても古びる内容じゃないと認めていただいた気がします。そしてもちろん単行本も。
島崎憲司郎さんの『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW』は各所で絶賛されてきた超ロングセラーの古典です。このところ突出して出荷数が伸びています。