過日紹介した[3・11から考える釣りと環境シンポジウム]へ行って来た。大雪の影響で交通機関が乱れている中、60人以上の老若男女が集まった。会場では東京海洋大学客員教授でフィッシング・カレッジ主宰の奥山文弥さんにお会いした。小社の情報提供を見てお一人で来られたとのこと。すばらしいです。
今日のシンポジウムでは短い時間の中で本当に様々な立場からの発言があった。いま『フライの雑誌』の次号締め切り直前なのでくわしく紹介できない。印象的だった発言者のお名前だけを挙げると、今回のシンポジウムの発案者で当日の進行役も務めた「福島県で釣りを楽しむ会」の渡辺政成さん、基調講演をされて会場からも挙手して発言された東京勤労者つり団体連合会名誉会長の加藤恵司さん(83歳で現役フライマン!)、川内村の放射性物質調査に協力された京都大学准教授の岡田直紀さん、日本友釣同好会・日本渓流釣連盟の相吉孝顕さん、ライターの浦壮一郎さん、長野県上田市の弁護士山下潤さん。書ききれない。
後半のフリートークの初っ端で、司会者さんから指名をいただいてわたし(堀内)もマイクを持った。あまり覚えていないがとっさに出てきたのはたぶん、こんな内容だったはずだ。
「釣りという趣味は基本的にはソロ活動だ。それぞれが勝手に楽しめばいいと思っている。だが原発事故というような社会的で大きな問題に直面した時、ソロ活動でできることには限界がある。その意味で「福島県で釣りを楽しむ会」の活動をリスペクトしている。福島第一原発事故による野山と渓流の放射能汚染は、セシウムだけでも30年以上続く。わたしたちが生きている間は汚染は消えない。この現実を前にして釣り人ができるのは、もうこれ以上の放射能汚染が起きないような社会を次世代に残すことくらいだ。今日のシンポジウムに集まったみんなが情報と思いを共有して、それぞれの立場へ持ち帰って話題にして関心を持ち続けることで、今よりましな未来へつながっていけばいいと思う。フライの雑誌社では川と湖の魚の放射能汚染について、水口憲哉氏の『淡水魚の放射能』」という単行本を出版した。いま日本の淡水魚の放射能汚染がどうなっているのか、これからどうなるのか、チェルノブイリでの先例を踏まえて深く論じている。今日のシンポジウムに贈呈するために持ってきた。会場後ろの棚に置いてあるので、興味のある方はぜひ手にとってほしい。」
さっき自宅へ帰ってきてお風呂に入りながら、「あー、こういうのも言えばよかったんだよぅ」と思ったのが、次の一節。
「そこの川と湖の魚は放射能で汚染されているから、釣ってもすべてリリースしなさい、という想像を絶するような釣りが、いま日本で現実に行われている。わたしが好きな釣りはそういう釣りではない。だから原発はもうかんべんしてほしい。ねえみなさん、そうですよね」
(堀内正徳)