いつまで繰り返す愚行かな

ダム建設を認めた段階で、
小国川沿川で暮らす人々や全国の釣り人は
115年以上維持されて来たアユの川を、
未来永劫に失ってしまう。

…ダム建設に河川の漁協が反対する構図は、ありそうで実はどこにでもあることではない。というのは日本の川でダムや河口堰の建設されていない川を探すのが大変という実態があるからである。

筆者は最上川の支流である小国川を訪ねるにあたり、小国川のアユやサケ、マスについて調べていった。その際、最上川本流と小国川にまだダムがないことのもつ意味、その素晴らしさにあらためて気付かされた。 …

穴あきダムを建築する場合、水没した沿川の樹木が根こそぎになって流れ下りダムの穴を閉塞してしまってはまずいということで、事前に全部伐採してしまう。穴あきダムがいくら環境にやさしいといっても、川を埋め立てコンクリートの巨大な構造物を建てることには変わりはない。

通常のダムでも穴あきダムでも、建設時には河床は掘り返すは、工事を可能にするためにバイパスをつくるはで、川は何年にもわたってぐちゃぐちゃにされる。そして完成した後は、常に土砂を推積し、時にはどっと流したりするダムが運転される。

東北一に味がよいといわれる小国川のアユは、きれいな水と香りのよいコケで育まれる。小国川に穴あきダムが建設された時、アユがどうなってしまうかは検討の必要もない。それゆえ、環境にやさしい穴あきダムと言ったところで損害賠償としての漁業補償を払うと、ダム建設者は言う。しかし、それを受け取りダム建設を認めた段階で、最上町や舟形町の小国川沿川で暮らす人々や全国の釣り人は、現代まで少なくとも一一五年以上維持されて来たアユの川を、未来永劫に失ってしまう。…

(山形県・小国川 ダムのない川の「穴あきダム」計画を巡って)

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