日曜日に開成フォレストスプリングスで開催された第1回「Tエリアゲームス」を見てきた。

都内から東名高速で40分、午前10時すぎに開成フォレストスプリングスに着いた。さっそくトーナメント会場を見渡したが予想外に人がいない。そういえば今日は、一日じゅう雨風はげしく大荒れという予報が出ていた。

開成フォレストスプリングス

さいきん桂川でやられまくっている私は、雨だと聞けばうれしがるくらいで気にもならなかったが、今日は大雨だから行くのヤメようという方が多かったようだ。エントリーが当日現地集合だったのも影響あったかもしれない。いずれにしても寂しい参加者数で、エントリー数を書くのがはばかられる。12名だそうです。ほかの池を見るとルアーの釣り人も少なくて、開成はいつ行っても人が多いイメージがあるから、これは競技が終わったらチャンスだとほくそ笑んだ。でかいのをオカズに持ち帰ろう。

私が着いたときにはすでに準々決勝戦まで終わっていた。準決勝までのあいだ、敷地内のお気に入りのレストランで池を見ながら食事することにした(ロマンスカーを見ながら食事できるなんて!)。すると競技の参加者と関係者さんたちが10数人やってきてすぐ近くで食事し始めた。私でも見知っているフライ業界の方ばかり。あらためて参加者さんの面々をうかがうと、ほとんどがお互いに知り合いくらいの内輪っぷりのようすだ。

平均年齢は50歳くらいでフライ歴は20年くらいか。要はみなさん背中に苔の生えたようなベテランさんばかりということだ。フライフィッシングの釣り競争という発想自体が危うい線だとは思うが、全般にフライフィッシングをあたらしく始める人がごく少なくなっているのは事実で、どのみち業界的には将来が見えない。おもわず『フライの雑誌』で連載中の「フライファン『適正増』戦略のご提案」(増沢信二氏)にあった〝フライ界はお寒い〟というフレーズが頭をよぎった(第82号49頁)。

さて、ルールはこちらを見ていただくとして、横に張りついて競技を見学したところ、えらくおもしろかった。先日、釣り競争をプロレスに例えた。一流のレスラーにはたとえば小橋建太には小橋建太の、武藤には武藤の型や作法があり、観客はひと目見れば小橋だな、武藤だなと、わかる。手練の釣り人にも、それぞれが長いあいだつちかってきた型がやはりある。刻々と変わる自然の状況へ自分の釣りの型をどう対応させるのか、あるいは自信のある型で貫くのか、そこらへんが観客として手に取るように見えるところが、ひじょうにおもしろかった。もっともこれは半分業界に浸かっている者の穿った見方かもしれない。あの人はやっぱりあの釣り方でやるのか、あれ、釣り方変えたぞ、だめだったのかな、とか。

内輪ウケとはいえかなり盛り上がった競技の末、栄えある第1回の優勝者はけっきょく、共同主催社ティムコの社員さんの竹内氏だった。ずっこけてはいけない。彼は徹頭徹尾、自分の釣りの型を押し通した結果といえる。風が吹いて水面が波だち、魚がうわずったほんのいっときなどは、ソフトハックルを水面直下で引いてくる彼の釣りは、ほぼイレグイだったのである。見事な釣りだった。

毛針

他人様との競争が苦手というか、そういうものからベタ降りしている身の私が、外野からえらそうに批評するようで申し訳ない。釣っている阿呆を見ているだけのもっと阿呆という言葉がある。釣り競争に参加したくはないが、見ていること自体おもしろかったというのが正直な感想だ。準優勝された方に釣り競争の魅力についてインタビューした。すると「いつもの暮らしでこんなドキドキすることはないからね。」という答えをいただいた。参加していた方はみなさん楽しそうだった。ともあれ運営の実際といい優勝者といい、「Tエリアゲームス」の「T」はやっぱりティムコの「T」だったかという気がしないでもない。第2回は7 月に那須白河フォレストスプリングスで開催だそうだ。興味のある方はどうぞ。

競技が終わったら釣りしようと思っていた件については、雨がどしゃぶりになって無理だった。