荻原魚雷 おぎはら・ぎょらいさん(文筆業)から。
話は変わるけど、『フライの雑誌』の最新号(103号)が出た。特集は「すぐそこの島へ」。頁をめくるのがこんなにワクワクするのは久しぶりだ。
行き詰まってくると、いつも島に行きたくなる。行き先はそんなに詳しくはないのだが、なぜか瀬戸内海だ。島に行って、とくに何もしない。そんな時間に憧れる。
特集ではないが、この号でわたしも福田蘭童と石橋エータロー親子の釣りの話を書いた。
わたしは釣りはほとんどしていないのに、フライの雑誌社の本が好きになった。
とにかく釣りに人生を捧げる人たちの言葉が眩しかった。…
四釜裕子 しかま・ひろこさん(編集者・詩人)から。
釣りはしないが本屋でみつけて以来ファンのこの雑誌に「川向こう」という釣りには関係のない短いエッセイを書かせてもらってうれしい。隅田川と寒河江川それぞれの川向こうのことなど。川はあるよね誰の頭にも。地球儀ってやつ。専門雑誌というのは好きなひとが好きなひとに向けて…
『フライの雑誌』を読んでいると川がヒトに強烈親戚を派遣したみたいと感じることがある。…
フライフィッシングどころか、釣りそのものをほとんどしていない荻原魚雷さんと、釣りはしないという四釜裕子さんに、『フライの雑誌』第103号へ原稿を書いていただいた。
こころから素敵だと思えるスタンスで、ずっといい仕事を続けていらっしゃる。わたしが個人的に大好きなお二人だ。
好きな相手へデートを申し込むとき、心臓がバクバクするのと同じように、お二人へ原稿を依頼するときは、わたしはおっさんのくせに胸がドキドキして破裂しそうだった。
厨二みたいなきもおっさんにまとわりつかれた先様は、「マニアな釣り雑誌に原稿依頼されたが、釣りマニアじゃない自分はなにを書けばいいのか」と思われたかもしれない。ごめんなさい。
読者にはお分かりのように、魚雷さんと四釜さんは第103号へ最上質のエッセイ原稿を寄せてくださった。しかもご自身の文章でも、第103号を上記のように紹介してくださっている。わたしはいま夢見心地だ。
というわけで誰も興味ないだろうが、今思っていることをメモしておく。
わたしは2003年11月発行の第63号から『フライの雑誌』の編集人をやっている。楽しい日々を過ごしてきたが、じつは同じくらい苦しくてつらかった。理由は『葛西善蔵と釣りがしたい』に書いた。
去年2月発行の第99号か、8月発行の第100号記念号あたりから、苦しさやつらさが自分で分からなくなった。雑誌を作るのが、単純に楽しいと思えるようになったと言っていいと思う。10年かかった。