テレビで羽生ゆずりん選手の決め顔、決めポーズを見る度にイラっと感をおぼえる。むかし「頭がいいのは足が速いのと同じだよ」「だってぼくは君の王子様」「ラブリー」とかほざいて、キャーキャー言われながらステージで歌っていた小沢健二へ抱いた、ほぼ殺意に近い憤りに似ている。
きみたちは「王子」だよ。ああ、わたしはただのおっさんだ。
昨日は八丁堀の日本フィッシング会館で、フライの雑誌社も会員の日本釣りジャーナリスト協議会総会へ参加した。そのあと4階のJGFAさんへお邪魔して、フライフィッシング界の王子、東知憲さんに付き合ってもらった。楽しかった。東さんの話を伺うのはいつもとても勉強になる。つり人社から東さんが出していた雑誌「タイトループ」はもちろん全巻持っている。王子かどうかに年齢はあまり関係ない。東さんはわたしより歳上だけれど王子だ。どんなときでもくずれない。ほんとうにうらやましい。
八丁堀を出て、銀座ランブル、新宿サンスイ、阿佐ケ谷吐夢の黄金ロードを渡っての帰り道の中央線で鮮明に分かったのだが、わたしのこれまでの人生で、もっとも足りなかったものは「王子」だった。そしてこれからの人生で間違いなく手に入れられないのも「王子」だろう。わたしと同じ哀しみを感じているおっさん連中は多いはずだ。そのうち『ぼくには王子が足りない。』というタイトルの本を出したい。
こないだまで来日していた英国のケンブリッジ公ウィリアム王子(32歳)は、ほんものの王子だ。このところ急速におぐしが少なくなっている王子を、だからといって〝ロイヤルハゲ〟とかからかうのは、面白いけどやめたほうがいいと思う。王子だって好きではげるわけではない。お兄ちゃんの若はげをからかっていた弟のヘンリー王子は、さいきん自分も来始めている。Curses return upon the heads of those that curse.
はげつながりで言っておくと、昨夜の阿佐ケ谷でカウンターに並んだテレビ系のグラサンこわもておじさん(推定50代)は、「おれは若いころは肩までの長髪だったんだ」と言っていた。いまはつるつるのスキンヘッド。わたしも怖いもの無しなんで、「なぜそっちにしたんですか」と直球で聞いてみた。すると、「だんだん前の方がきちゃってよ。薬に頼るのもどうかと思ったんで、カミソリで剃っちまった。その頃はいいカミソリがなくてよ。まずすね毛を剃って刃を甘くしてから頭をやるんだ。それでもあんた、全頭血まみれよ。」と、グラスをあおっていた。「いまは5枚刃だから大丈夫。すいません、同じの、もう一杯」。おじさん、かっこいいよ、おじさん。
というわけでさいきんあっちへうろうろ、こっちへうろうろしている。
写真で紹介。