『フライの雑誌』連載中、荻原魚雷さんの新刊『書生の処世』(本の雑誌社)が出た。まずものすごくおしゃれでかっこいい本だ。落ち着いた白マットのすべすべ感が上品な陶器のようだ。実際に手にとってこの気持ちよさを味わってほしい。
三十代以降、暇つぶし、気休めの読書も奥が深い。調子があまりよくないときに気楽にパラパラ読める本には、ずいぶん助けられてきた気がします。『書生の処世』もそういう本になってほしいとおもっています。(文壇高円寺)
人は出会った本に助けられることがある。ならば一冊の本には世界を変えるちからがある。「高校時代は世の中を変えるような思想家になりたかった。」(216頁)魚雷さんは、20数年たって本をだすことで世の中を変えようとしている。寄り道と脱線と本線を気の向くまま往来するのが人生の楽しさだ。ただし道は曲がりくねって暗い。半ちく書生には不安や悩みがつきものだ。本書で紹介されている本たちが〝書生の処世〟となるゆえんだ。
本書は「本の雑誌」の人気連載記事に書き下ろしを加え、全面的に編み直したものだ。なんと「フライの雑誌社の本を読む」という章もある。「本の雑誌」2014年6月号の魚雷さんの連載で、『朝日のあたる川』と『葛西善蔵と釣りがしたい』を紹介してくださっていてありがたかった。でもそれが本書に載るとはなぜだかまったく思っていなかったので、「うわ、載ってる」と思ってまじめにびっくりしたところです。
魚雷さんおすすめの一冊、『朝日のあたる川』(真柄慎一)をぜひともお手にとってください。あなたの未来をさんさんと照らすまっかな朝日が目の前にでっかくのぼることでしょう。