仕事している内にいつのまにか午後4時20分をすぎていた。急げ急げと川へ出かけたために、カメラも携帯も両方編集部に忘れた。長靴で川に入ってリールをちーちー言わせている時に気づいた。戻れば5分で取ってこれるが、秋の夕陽はつるべ落とし。暗くなっちゃうしめんどうだし、そのまま釣りすることにした。べつに写真撮って誰かに見てもらうために俺オイカワ釣ってるんじゃないし。などと釣り雑誌の人にあるまじきことを思ってみたりもする。
今日のオイカワ釣りの竿は、京都の竹竿師、北岡勝博氏作の7フィートちょっとのマダケ竿にした。4、5年前にハヤ釣り用に作ってもらった。ラインは3番を乗せてある。1番から4番まで乗るが、今は3番がちょうどいいと思っている。
北岡氏は『バンブーロッド教書』の表紙絵を描いてくれた人物だ。バンブーロッドはその竿を作った竹竿師の人物ごと、自分の釣りに連れて行くようなところがある。ビルダーの魂がシャフトに乗っかっているのが竹竿の魅力だ。魂が乗っかっていない竹竿はつまらない。フライフィッシングはストーリーを求める釣りだ。
北岡ハヤ竿は、自分の目、頭、胴体、腕、手のひら、グリップ、フライラインの先端、リーダー、フライまでが、麺のようにひとつながりになる。しかもルフィーの手足のように伸縮自在だ。この感覚を覚えるロッドはなかなかない。竹フェルールとフラットグリップが効いているのもあるのだろう。腕とフライがつながっていれば、魚を釣るのは簡単だ。
今日のオイカワは、夕方5時過ぎからライズが本格化した。ライズへ向けてまっすぐアップに投げると出づらい。サイドからすくいあげるようにしてプレゼントして、フライを水面へポトンと落としてやるとよく出てくれた。そういう投げ方にはぴったりだった。
フライは白いのより黒いの、水面上より水面直下の方がよかった。とはいえ、「そんなような気がする」というだけの話で、ほんとのところはオイカワに聞いてみないと分からない。聞けるわけないじゃん。たとえオイカワが答えてくれたとしても、あいつらは気まぐれだ。
明日になったら違うことを言うに決まっている。