書店取次の地方・小出版流通センターさんから、『フライの雑誌』バックナンバー第90号(特集◎クロスオーストリッチ)、第102号(特集◎シマザキワールド14)の受注。最新第107号に島崎憲司郎さんの記事が出たからだ。
島崎憲司郎さんが『フライの雑誌』の誌面に出てくださると、すでに古典となった著書『新装版 水生昆虫アルバム』はもとより、何年も前のバックナンバーの「シマザキもの」が一気に動く。時間やブームで消費されない出版文化の意義を志向している本誌としては、いちばんうれしくてありがたいことだ。
第107号の編集後記に、わたしは「憲司郎さんがギアを切り替えた」と書いた。実際のところ、昨年12月始めの取材時の島崎憲司郎さんは、なにか世俗のつきものが落ちたかのような、すっきりとした表情だった。107号の記事にもある通り、自分自身の興味をとことん追いつめるシマザキ式ものづくりの真骨頂が、これからの数年間に集約される。
以下、『フライの雑誌』最新第107号85ページから、単行本「『シマザキフライズ』について」の一文を紹介する。
〈島崎憲司郎の現在〉についてもっとくわしく知りたい方は第107号の記事をどうぞ。
『シマザキフライズ』について
●2015年1月25日、渋谷区代官山で開かれた「FFファンミーティグ」のメインステージで、鈴なりの観客を前にした島崎さんは、いつものフレンドリーなシマザキ節とは少し異なる真面目な口調で、これまで30年以上続けてきたこのようなイベントでのデモは、今回をもって最後とさせて戴きたい旨を語り出した。その真意は、今後は自分が本当にやりたいしごとに集中したいから、ということだった。その内の一つが、フライの雑誌社から発行予定のシマザキフライの新しいタイイング本だったはずだ。
●島崎さんは、毎回熱心にご覧になって下さった感謝を述べた後、「これが最後のデモになりますので、どうかじっくり見届けてください」と言ってから、バイスに手を掛けた。正面のかぶりつきには、かの備前貢さんが陣取り、食い入るように島崎さんの指先を見つめている。持ち時間が終わって「ありがとうございました」と挨拶。一瞬の沈黙の後、万雷の拍手が1分以上も鳴りやまなかった。
●本誌読者の皆さんから、その本─仮題「シマザキフライズ」への問い合わせとご期待の声を多くいただいていている。編集部では今回の桐生行きで、発行日をきっちり約束していただくつもりだった。が、〝宣言〟から11ヶ月、あにはからんやシマザキデザイン・インセクトラウトスタジオは、こちらの想定が完全にぶっ飛ぶ進化と変貌を遂げていた。
●2008年から2012年にかけて島崎さんは職業病とも言える指先の障害が重傷化し、タイイングを含む様々な手作業が困難となる。タイヤーとして大変なストレスを抱えていたのみか、日常生活にも支障を来すほどだった。それを自然治癒力で完治させてどん底状態から脱し、以前を上回る突き抜けた状態に復活する経緯は『シマザキワールド12』(第88号2010年)に続く一連のシマザキものにリアルに記録されている(シマザキファン必読)。
●その4年間のブランクを含めてのこれまでの何十万時間にマグマのように蓄積されてきたオリジナルスキルや、皆さんのお役に立てそうなアイデアの数々を具現化して、後世のフライフィッシャーに共有していただけるような形で統合して残す段階に入ったと島崎さんは言う。シマザキフライについて商業ベース絡みの情報しかご覧になっていなかった方々は「こんなディープなこともコツコツやっていたのか!」と愕然とすることだろう。
●今回の桐生行きで、現在進行中のアッと驚く未発表のシマザキワールドの海にどっぷり溺れてきた。そして葛飾北斎と応為父娘のピュアでシンプルでストレートな生きざまからインスパイアされたというクリエイターとしての腹の据え方と既存の観念にとらわれない新しいアプローチこそが、島崎さんの独創的な世界を後世に残すに最も相応しいことを強く確信した。まちがいなく、ありがちなタイイング本などとは次元が違うユニークな形に結実することだろう。そのクロスメディアには「本」の形も含みつつ、それぞれが従来にない形でリンクしている。「たぶん『水生昆虫アルバム』の10倍以上オモシロイことになるよ」とのこと。島崎憲司郎さんと本誌の今後の動向にご注目ください。(本誌編集部/堀内)
・・・・・
[島崎憲司郎氏『フライの雑誌』掲載著作&登場記事リスト]
1987フライフィッシャーマン(創刊号)
レッドアイ・リーチ(創刊号)
発言! ある記事に関するコメント(第2号)
植物で虫をつくるイタズラについて(第3号)
パワー・ノット、驚異の結節力(第4号)
バンブーロッドのメンテナンス(第5号)
センチメンタル・リバー(第7号)
シマザキフライの現在(第10号)
失楽園…スイスへの手紙にかえて(第12号)
カモの毛フライはなぜ釣れるのか? 中沢孝×島崎憲司郎(第13号)
シマザキフライ・カモの毛パターン(第13号)
ダイレクト・ハックリング(第16号)
島崎憲司郎フライ独談 エルク・ヘア・カディス(第17号)
MCDCテクニック 人造CDC効果とその応用例(第20号)
水生昆虫アルバム連載1~23(創刊号~第23号)
渡良瀬川(第27号)
シマザキ・ワールド1.シマザキ・キャスト、FFの未体験ゾーン(第27号)
シマザキ・ワールド2.シマザキフライとマテリアルの新作(第32号)
シマザキ・ワールド3.単行本「水生昆虫アルバム」はなぜ発行が遅れているのか(第36号)
単行本『水生昆虫アルバム/A FLY FISHER’S VIEW』(初版1997年)
シマザキ・ワールド4.水生昆虫アルバム・AFVジャバラ(初版特別付録)
シマザキ・ワールド5.そして、AF以後 AFVのご感想への感想(第39号)
シマザキ・ワールド6.水生昆虫アルバム・AFVジャバラ(第2版特別付録)
Bijarne Fries in Kiryu(第43号)
シマザキ・ワールド7.Jurassic Flies 巨大フライのファンタジー(第48号)
シマザキ・ワールド8.竹林へ(第49号)
鳴かず飛ばずの日々(第56号)
シマザキ・ワールド9.腰痛、釣りノート、シマザ木(第62号)
追悼 中沢 孝 ―中沢さん、早く死にすぎだよ。百まで生きてフライ界の激辛爺さんになってもらいたかったのに…(第63号)
シマザキ・ワールド10.ミミズクは夜が昼間(第70号)
単行本『水生昆虫アルバム/A FLY FISHER’S VIEW』(新装版2005年)
シマザキ・ワールド11.シマケンコイル&ノット(AFV新装版特別付録)
シマザキ・ワールド番外編 島崎憲司郎2008(第83号)
シマザキ・ワールド12.フライフィッシングは指先が命 ─不自由だから工夫する
指痛日記2008-2010(第88号)
クロスオーストリッチ 新しいスタンダード・フライの可能性(第89号)
特集◎クロスオーストリッチを巡って around the Cross ostrichタイイングと解説 島崎憲司郎(第90号)
羽舟さん(竿を作るしごと)。特集◎[シマザキ・コイル]ただ今進化中(第92号)
シマザキ・ワールド13 島崎憲司郎 マシュマロブーム、北岡竿、この夏の収穫、ココロの舵(第98号)
ウエイテッド・ロッドで遊ぶ[Paradoxical Ballast(略称PB)をめぐって](第99号)
特集◎フラット・グリップ・レボリューション Flat Grip Revolution(第100号)
ある日の島崎憲司郎 Fly Fishing Fan Meeting 2014(第101号)
特集◎シマザキ・ワールド14 シマザキフライズ2014 Shimazaki Flies 2014 Selection(第102号)
特集◎シマザキ・ワールド14 シマザキフライズ2014-2 Shimazaki Flies 2014 Selection-2(第103号)
特集◎シマザキフライズ・最新セレクション Shimazaki Flies Jan.2015/カウンター・バックストップ/逆ループキャスト(第104号)
『晦魄環照(かいはくかんしょう)』刊行によせて(第105号)
特集◎シマザキフライズ × I.F.F.F. in 桐生 tyer 島崎憲司郎(第107号)
>and MORE
.....