20年選手のエアコンがいいかげん壊れた。冷房の電源を入れると、強烈に暖房してくる。しかもその熱風がものすごくくさい。ほとんど嫌がらせである。
こりゃあたまらんというわけで、新しいのに買い替えることにした。家電屋さんに行ったら高いのと安いのとが並んでいて、店員さんは高い方を薦めてきた。「高い方にはエコポイントがつくのでかえってお得です。」というのが殺し文句だった。新品エアコンとリサイクルで、合計12000点のエコポイントをくれるらしい。
薦められるまま高い方を買ったのが、じつは一ヶ月前のこと。買ったその場でエコポイント12000点分の何かをもらえるのかと思ったらそういうことではなく、別途お国に申請しないといけないらしい。じゃあどうやるんですかと店員さんに申請の方法を聞いたが「自分もよく分からないんです。」と苦笑いしているばかりで役に立たない。薦めておいてなんですか。書類をちょっと見るととにかくめんどくさそうだったので、そのまま放置しておいた。
で、今週、政権が変わると政策も変わりましたということになったら困るから、ここらでエコポイントもらっておいたほうがいいだろう、ということになった。放置しておいた書類をいやいや開くと、これがやはり超めんどくさい。インターネットで自分で申請しなさい、というのがエコポイント事務局の基本姿勢だ。URLはこちらと書類に書いてある。なかなかえらそうだね。
画面上で、申請者の氏名・住所・年齢そのほか、社会属性をしつこく記入させられた。いまどきここまで個人情報を収集する通信販売もあまりない。しかも記入した書類を自分でプリントアウトして(4枚も)、領収書を貼り付けて、郵便で(!)事務局に送れと書いてある。
いやあ、エコだ。パソコンもプリンタも使わせるわ、用紙とインクも消費させるわ、郵便屋さんの手間はとらせるわ、たいへんなことだ。フード・マイレージならぬエコポイント・マイレージが問題になりそうである。ネットにつなげない環境の人々への対応はどうするのか。行政機会の不均等というものだ。近所のおばあちゃんはエコポイント対象商品を買ったけどわかんないからそのままにしているって言ってたよ。
だいたいにおいて、なるべくひっそり暮らして低炭素社会をつくりましょうと言っている同じ舌の先で、モノ買えばエコロジーだから新しいのにどんどん買い替えましょうとは、どれだけ欺瞞でごまかしで、ペテンでまやかしで、恥知らずな詐欺師のやり口だろう。ネクタイ外させる前にたくさんやることあるんじゃないですか。
さすが本来は天敵として相対しなければいけないはずの経済産業省とがっちりタッグを組んでいる環境省だけのことはある。『フライの雑誌』的に余計なことをいうと、外来魚を殺して金に換えて失業対策にしようという、生物学的にぐちゃぐちゃな施策が全国各地でとられていても、環境省をトップとする日本の環境屋さんたちが平然としていられる理由はそこにある。
エコポイントなんて、こんなふざけた税金の使い道を発案した政治家と役人に、この際ハッキリ言っておこう。世の中の誰もがちょびっとばかりのカネで転ぶと思ったら、大間違いだ。
わたしは転んだけどね。だって商品券ほしかったんだもの。せめて封筒の表書きは「エコポイント事務局 御中」ではなくて「行」にしておいた。なんて地味な抵抗なんだ。申請した書類を事務局にチェックしていただき、ケチがつかなければそのうち12000点分の商品券が送られてくるはずだ。
12000円分じゃないところが、エコポイント。