釣ったことがない魚なので楽しみだ。マングローブの林を小さなボートでめぐり、ここぞというポイントをラン・アンド・ガンしていくらしい。平均70センチオーバー。腕が痛くてもうダメ、くらいになりたい。
海外の釣りというと、もう15年以上前に西山徹さんがお元気だったころ、初めて一泊の釣りへご一緒させていただいた時のことを思い出す。群馬県の山上湖だった。忙しい西山さんはパラオだかのジャイアント・トレバリー釣りから、ちょっと前に帰って来たばかりなんだと言っていた。
私にとってテツ西山は子どものころからのヒーローだった。東北道のSAで西山さんの(たしか)プラドの助手席に乗り込むことに成功した私は、かなり緊張していた。西山さんはハンドルを握りながら、GT釣りのスゴさについてアツく語っていた。私は自分もなにか話さないといけないと思い、西山さんに質問した。
「そんなにデカイ魚を釣った後で、今日みたいにせいぜい尺くらいのヤマメやイワナを釣って、面白いんですか?」
いま思えば、あの西山徹にスゴいことを言ったものだ。緊張してワケ分かんなくなっていたんだな。西山さんは若僧の失礼な質問に怒りもせず、いっしゅん助手席の私を向いてひとこと、「面白い。」と言った。そして独特の笑顔でニカッと笑った。
釣りに行く途中の車の中で、あんなに楽しかった会話はあまりない。その日の釣りはボウズだったが、いまも鮮明におぼえている。