JGFA(NPO法人 ジャパンゲームフィッシュ協会)YEAR BOOK 2016

『フライの雑誌』第67号(特集◎私の好きなフライリール/2004年 売切れ)に、「釣り具の博物館で過ごす休日」という記事を載せた。よく知られている通り、日本の釣りは国土の大きさに比して世界でもめずらしいほどに楽しみの幅が広く、歴史があって、奥が深く、その分だけ釣り道具も多種多様に展開してきている。上記の記事で紹介した施設ではバラエティに富んだ釣り道具の一端を楽しめる。

いま日本には、釣り道具をテーマにした公共の博物館、資料館がひとつもない。個人が情熱を注いで収集した貴重な釣り道具は、そのコレクターないし家族が何らかの理由でコレクションを手放さなくてはならなくなったとき、まとめて保存する場所がなければ散逸する。どこかの博物館なりにおさめたとしても、それらの釣り道具の意味を学芸員さんが知らなければ、価値が活かされず死蔵となる。

たまたま昨夜、AmazonのFire TV Stickで、IGFAが制作した釣り番組を観た(無料ですよ)。これがもう本当にセンスよく取材経費もばりばりかかっている一級のコンテンツだった。以前、『フライの雑誌』第37号(1997)で、「TV釣り番組は面白いか」という特集を組んだ。当時はテレビの釣り番組が全国ネット、地方局制作のレギュラーが複数あって常に競い合っていた。現在はどうか。数は増えているか、クオリティは向上しているか、チャレンジングであるか。

日本製の釣り具は精度がよく堅牢性が高いと海外でも評判だ。しかし文化方面への注力と投資は、日本企業は海外の企業にくらべて積極的とはとうてい言えない。釣りは遊びなんだから、メーカーだって販社だって、目先のモノがただ売れればいいというのが、釣りとの本来の関わり方ではないだろう。すいません、生意気言って。

日本の釣り文化を育み、支え、次世代へ残すための気運は、釣り業界全体の景況が落ち込んだここ10数年で、後退しているように思う。衣食足りて礼節を知るという。文化は余力でつちかわれる。立っているだけでやっとという状態ではやりたくてもできないこともある。それでも、と思う。

JGFA(NPO法人 ジャパンゲームフィッシュ協会 Japan Game Fish Association)さんの、〈JGFA YEAR BOOK 2016〉のご紹介。巻頭特集が秀逸だ。ベテランのフライフィッシャーなら誰しも小さな感嘆のため息とともにその名を口にする、あの「Tight loop」誌(別冊つり人)の雰囲気が漂う。おすすめ。

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フライの雑誌 第89号特集◎面白い釣り動画のつくり方
フライの雑誌 第89号特集◎面白い釣り動画のつくり方