群馬県桐生市に住まわれている中村羽舟さんは、御歳86歳になられるいまも、日々作業場に立って竹を削っている。羽舟さんの後ろ姿を〝世界最高齢のバンブーロッド・ビルダー〟と評したのは、東西の竹竿事情にくわしい東知憲さんだ。それが5年も前のことだから、ぶっちぎりで最高記録更新中である。
羽舟さんのしごとについては、過去に本誌はもちろん、多くの雑誌・単行本・新聞・テレビで紹介されている。その中でひとつなら、『フライの雑誌』第92号掲載のシリーズ〈竿をつくるしごと3〉、島崎憲司郎さんの筆による「羽舟さん」をすすめたい。
島崎憲司郎さんは、羽舟さんの20歳年下の桐生の朋友だ。バンブーロッド・デザインにまつわる様々なアイデアを羽舟さんへ次々に提示し、二人で揉みながらテストしてきた。羽舟竿の伴走者である。
いまや世界じゅうで作られている〝竹フェルール〟のオリジナルは、島崎さんと羽舟さん、ビヤーネ・フリースさんの三者の関係から創造された。1998年のことだ。本誌の創刊編集長である中沢孝もその場にいた。桐生タイムスの記者、青木修さんが、著書『晦魄環照 探訪・桐生の近現代』で、歴史的な一夜を現場の写真付きで紹介している。
「羽舟さん」の中で、島崎憲司郎さんは羽舟竿をこんな風に表現している。
細身で軽快な羽舟竿、フランスの空気銃のような羽舟竿
羽舟竿は羽根のように軽く、言葉を研いた詩のように清々しいフライロッドである。
今週、あたらしい羽舟竿がわたしのところにやって来た。(今年二本目なのです)
さっそく川で釣りをした。
写真で紹介。