魚のリリース方法について。ハリを呑まれたらハリスを切る。

魚の種類の大小を問わず、フックを呑まれてしまった場合のリリースは、リーダーをカットしたほうがよいということでしょう。
JGFAニュース 37)

フックを呑まれたけれどハリスを切ってリリースしたブルーギルが、フックを吐き出す確率は、2日後で約5割、10日後で7割超とのこと。

呑まれたらいじくり回さないで、チモトのぎりでハリスを切る。もちろん呑まれないのが上手。

リリース方法については、こんな研究もある。エサ釣りとフライフィッシングとの比較が興味深い。

イワナのフッキングモータリティー実験

[成果の内容・特徴]
・『口腔』と『体表』では、釣獲方法の違いによらず、死亡する可能性は極めて小さかった。
・『口腔』と『体表』では、傷口から菌が侵入し、周りの炎症から死亡することが考えられた。
・ 砂を塗してリリースされた魚の生残性は、低くなることが考えられた。(病気を誘引する可能性が大きい)
・『食道』では、鉤を無理に外すと死亡する割合が、特に幼魚で高かった。(図1・2)
・『口腔』に残留した鉤は、釣獲方法の違いによらず、3週間以内に80%以上が脱落した。
・『食道』で、ハリスをカットしてリリースした場合、3ヶ月以内に20~40%が脱落した。(図3)
・体内に残留した鉤は、腐蝕により破損・脱落・排出されるケースが見られた。

[成果の活用面・留意点]
・ 効果的なリリースの方法としては、口腔より奥に掛かった鉤は、無理に外さずハリスを切ったほうが生残を高められる。
・ 口腔に残った鉤は、漁法によらず高い割合で排出されるが、食道に掛かった鉤は長期間残留する。
・ 釣獲した魚の取り扱い方法により、リリース後の生残が高められる。
(栃木県水産試験場 水産技術部 資源研究室 土居隆秀、中村智幸 2000)

やはり「ハリスを切ったほうがいい」とのこと。

あとは、リリースするならもちろんできるだけ魚へ触らない。管理釣り場でネットごとだろうが岸の上に魚を上げて写真を撮ってリリース、なんて論外きわまりない。自分が十字架にかけられて逆さまに水中へ突っ込まれ、全身を巨人の灼熱の手でいじくり回されて、かつ何枚もしつこく写真撮られてウヒヒと喜ばれてるようなものだと思いましょう。ましてその恥ずかしい姿をSNSへアップされてごらんなさい。

リリースについて考えるときに、いつも思い出すのはこの一節。

…マッチ・ザ・ハッチなどというと、いかにも科学的な感じがするけれど、早い話が一種の便乗犯まがいのことをやっているわけなので、変に舞い上がらないようにしたい。それに…大きな声では言えないが、釣りというのは生き物に色々とダメージを与える要素を拭い切れない泣きどころもある。偉そうなことを吹聴すると、とんだ薮蛇にもなりかねませんゼ。もっとも、人間が生きていること自体、誰しもその辺は払拭できないわけだが。キャッチ&リリースも残念ながら免罪符にはならない。魚に言わせれば連続暴行魔と大差なかろう。科学的というフレーズがお好みなら「科学的犯罪」とでも言えばピタリである。
(『水生昆虫アルバム』(島崎憲司郎)14-15P)

生物多様性絡みで、人間はまさにえらそうに他の生き物についてアレコレ、殺せだ守れだと言っていますが、人間がいなくなるのが最も人間の利益になるのは、矛盾というより真理でしょう。

釣りなんて因業な遊びは、謙虚に、こっそり、粛々と。

あと、異性関係(同性でもいいけど)の表現で、人間どうしのくっついた・別れたにキャッチ・アンド・リリースを持ち出すセンスは、本当に恥ずかしいので、いいかげんやめてほしいなあと思います。幸宏さんは別

JGFAニュース 37
『水生昆虫アルバム』(島崎憲司郎)
『水生昆虫アルバム  A FLY FISHER’S VIEW』島崎憲司郎(文・写真・イラスト) 1997年初版、2000年第2版2刷、2005年に新装版。
イワナをもっと増やしたい!「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法(中村智幸著) いまだ謎の多いイワナの生態から渓流のゾーニング、喜ばれる釣り場づくり、話題の人工産卵場の作り方まで、渓流魚研究の若手ホープによる最前線の情報が満載。釣り人、学生、漁協、行政マンなど、渓流とイワナを愛する幅広い皆さんへお届けします。イワナ好きは必読。