フライフィッシング史に残る大著『フライフィッシング用語辞典』の著者、川野信之さんの新刊『ある毛鉤釣り師の足跡(あるフライつりしのあしあと)』を紹介します。
フライフィッシングを始めて価値観が変わってしまった男がすべてを語る本!
この本の第Ⅰ部では、これまで著者が雑誌などに書いた文から46の釣行記・エッセイを選んで掲載しています。
第Ⅱ部では”ドクターカワノの釣りスタイル”として、鱒とグレーリング、釣り方、釣り具などについて本音を書きおろしました。
また、著者の生い立ち、少年・青年時代の話、それとちょっとだけ本業(医師)の話も出てきます。
第Ⅰ部は、80年代後半から90年代にかけての『フライの雑誌』に掲載された川野さんのエッセイと釣行記を中心に編まれています。タイトル・ラインナップを見るだけで掲載時の印象などが次々と甦ってきました。
後半部、ドクター・カワノの道具論はきわめてユニークです。これまでほとんど書かれていなかった、ご本人の医学生時代のエピソードも多く書き下ろされています。青医連の大学闘争で逮捕された話もさらりと。川野さんのように社会的地位がある方がなかなか書けることではありません。
まさにご本人が語られているように、
一人の男の人生のほぼすべてが綴られていると言っていいでしょう。
渓流解禁前にゆっくりページを繰りたい一冊です。
また、466ページの大ボリューム、本文オールカラーは、お見事としかいいようがありません。カバー写真のセレクトも素敵です。
出版はそもそも一個人の思いを世の中へ広め、後世へ伝え残すための作業です。カワノ・ブックスがリリースしてきた、『フライフィッシング用語辞典』、『フライフィッシャーの昆虫学』、『水に浮くフライとその作成法』、『フライに対する鱒の行動』、そして本書『ある毛鉤釣り師の足跡』は、徹頭徹尾、川野氏個人の視線と情熱に貫かれています。
商業出版人の手の届かない清々しさを感じます。
そんな川野さんが、本書の発行を終えて、これからは「何もしないでのんびりする」(6ページ)、というわけにはいかないだろうと思います。
川野さんの今後のご活躍にますます注目です。
(堀内)
> カワノ・ブックス