神楽坂、市ヶ谷、阿佐ケ谷

生きてる内にいい釣りしたいので、原発も東京五輪もリニアモーターカーもいらない。歳とるごとに、釣りにいらないものばかり世の中に増えるのは、いったいなぜなのでしょう。

次号111号編集、あと7日で何もかもおさめなきゃいけない。お台所を一歩もでないで、何かコトコト煮込んでる鍋を、ずっと覗き込んでいたい心境。煮込み終えたら、なにもかも放り出して一人で釣りに行くんだ。

ぬぐいきれない嫌な記憶とか、直面している困難な現実も、魚釣りをしてれば、いっときは一切合切すべて霧散する。それはたしかに釣りの効用だけれども、それ以上の弊害であるかもしれない。

なんて今さらながら気づくのが、わたしの人生遅すぎた。

むうー。

日本出版会館の「本のフェス」へ行った。荻原魚雷さんが出店しているというので。連れに 「どんなイベントなの?」と聞かれた。「本のフィッシングショーみたいなもんだ。」と説明。「なるほど。」 君は本当にその説明で分かったのか。
相当にぎやかだった会場のなかで、長机のうしろにちょこんと座っている魚雷さんを発見した。なんかこうお店なのに、「ものを売ってます」感がまったくゼロだった。
神楽坂五十番の肉まん。おいしいです。四半世紀前にこの辺をうろうろしていました。当時について個人的なことを一言だけ言わせてください。特にありません
みんな知ってる市ヶ谷の釣り堀。
ここのコイはもともと良く引く上に、
短竿だから余計に制御不能。ロス・インゴベルナブレス・デ・市ヶ谷。
市ヶ谷の次は、阿佐ケ谷。吐夢の最終日、午後4時開店、
こんな明るいうちに吐夢へ来るのは生まれて最初で、今日が最後らしい。
二十代のころは仲間と奥のこの席に座った。二人のこともあった。三十代になって一人でカウンターへ座れるようになった。時々は二人でもカウンターに座った。つい最近になって、三人でカウンターに座るようになったら、閉店だという。
おトイレのなか。ここで泣いたことはない。
わいわい
がやがや
奥の席の窓からは阿佐ケ谷の釣り堀が見える。吐夢さんにはいろいろ助けてもらって言葉にできない。二〇代のガキがあっという間におっさんになってしまいましたが、これからも生きていきます。吐夢さん、和子さん、本当にありがとうございました。
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『フライの雑誌』第110号(2016)
葛西善蔵と釣りがしたい|たこはたこつぼが好きですが、じゆうに泳げるひろい海にもあこがれます。(本文より) 堀内正徳=著(『フライの雑誌』編集人)