野球大好き!

ではないが、大リーグの優勝シリーズはけっこう見ていた。日本プロ野球機構がでっち上げたクライマックスシリーズという名の茶番も、パ・リーグはぜんぶ見た。私も例のスレッジの逆転サヨナラ満塁ホームランには、テレビの前で牛乳を吹いてしまった人である。

で、スレッジの満塁弾も松井のMVP弾も、話題になったホームランはすべて生中継で見てしまった。というより私がたとえば風呂に入っているとか珈琲をいれているとかして、その場を離れていたとする。テレビの前に帰ってきてふと画面を見たその瞬間に、皆さん勢いよくバカーンと打つのである。「あッ!」という感じだ。あの忌々しい亀井と阿部の連続ホームランもまさにそうで、牛乳を連続で鼻から吹いてしまった。

どうも私には〝幸運を呼ぶ〟運があるらしいことには、以前から気づいていた。あくまで〝呼ぶ〟のであって、自分が幸運に恵まれるわけではない。身近な例では、閑散としたレストランに私のご一行が入り、ガランとした中で食事して店を出ようとすると、とたんにドヤドヤと客が入ってくる。もしくは近所のマグロ屋で「今日はヒマだね〜」などとご主人と話していて、「じゃあまた」と帰ろうとすると団体さんがやって来て、「うわ忙しくなった」と親父ニコニコする、とかいった具合だ。

先のホームランで言えば、スレッジのサヨナラ満塁弾は日ハムには最高の幸運だろうが、私の大好きな野村監督は寿命が20年は縮まっただろう(それまずいでしょ)。亀井と阿部のアベック弾には、クールなセーブ王・武田久のプライドが大崩壊した。洋行帰りの楽天・福盛投手においてはなにをか言わんや。だから逆の立ち位置にしてみれば私はむしろ間違いなく、〝悪運を呼ぶ男〟である。我ながらすごくいやなレッテルだけど。

それはそれとして、元AV大好き君・松井のMVP弾なんかは、ひねくれ者の私でも心からおめでとうと祝福したくなった。君なら年収12億円でもしかたないよとすら思う。だけどあれ多分、私が松井の打席を見ていなかったら、おそらく彼はホームランを打っていない。MVPだってとれなかったはず。つまり、海を越えた私の〝幸運を呼ぶ〟パワーが伝わってこそ、ゴジラはゴジラでいられたのだと私はかたく信じている。

自分自身への幸運はともかく、周囲の人に幸運をプレゼントしまくる私は、じつは黒子たる編集者のかがみであるかもしれない。私と関わった方はいつかきっと出世する。約束しましょう。だから『フライの雑誌』の関係者さんはそのありがたさをよく理解し、今後は心を入れかえて私を大切にするように。締め切り守るとかさ。

願わくば皆さんが、野村監督や武田久の側でないことを祈ります。私を大切にしないと、あっち側が真っ黒な口の中から手を出して、おいでおいでと手招きするであろう。

幸せを呼ぶ〈2010年『フライの雑誌』オリジナルカレンダー〉
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