次号112号オイカワ/カワムツ特集取材日記21「魚紳さんしか無理」篇

電話をかけるのは相手の貴重な時間を奪うとか失礼だとか、ビジネスタイムロスだとか言ってるのがいるようだが、いい頭だな。わたしはそんなこと全然思わない。

だけど、こっちからかける時はものすごく気を使う(だからすごく疲れる)。しょせん釣り雑誌からの電話で他人様のお時間をいただくのはたいへん失礼にあたるという自覚はものすごくある(相手が業界のひととかお役人様ならべつ)。だから、編集部へ先様からかけてくださった電話にはすべてハァハァ言いながら飛びつく。入れパクだ。

魚雷さんに評価してもらえるのは望外の喜びだ。でもわたしの場合は「大志のためには採算度外視で良書を!」というよりか、むしろ山っ気たっぷりで毎打席堅実に場外ホームラン狙ってるのに、結果として採算度外視になってる? おかしいなあ、という方が近い。あと、結果として採算度外視(しつこい)の出版活動を続けているうえで、すごいのはわたしじゃなくて、わたしの妻であるのは間違いない。今日は七夕だね。

さいきんよく思うのは、こんな時代につくられる紙の印刷物の意味は、情報伝達のための媒体とか、経済活動のための物理的対価とかじゃない。100年後にはいま生きているわたしたちは全員死んでいる。100年後にだれか生きている人がいたとして、その人の本棚にうちの出した本が刺さっていてくれればいいなと思って、本づくりをしている。

あるいは、とっくに人類が死に絶えた世界で、人類じゃない知的生命体がわけのわからないガレキのなかから、奇跡的に『フライの雑誌』や単行本を発見して、なんだこりゃ、解析してみるか。……こいつらあほか、とか言ってくれたら最高だ。

以前、萩尾望都さんの「なのはな」について余計なことを言ったが、要は古文書をつくっているつもりで本をつくっている。だから10万年くらいは余裕で保存できる印刷を印刷担当の東京印書館さんにはお願いしている。

以上のような観点から、編集部へかかってきた電話には、常にヘッド&テールで飛びついている次第だ。

今日も川へ行こうかな。

北浅川のここら辺でお魚に遊んでもらうのは、
魚紳さんしか無理。釣りを知らないのが丸分かりの釣りをネタにした広告は釣り師には超恥ずかしい。このシリーズは写真もデザインもきれいなのにコピーでたいていずっこける。京王線たのむ。
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葛西善蔵と釣りがしたい|たこはたこつぼが好きですが、じゆうに泳げるひろい海にもあこがれます。(本文より) 堀内正徳=著(『フライの雑誌』編集人)
『水生昆虫アルバム  A FLY FISHER’S VIEW』島崎憲司郎(文・写真・イラスト) 1997年初版、2000年第2版2刷、2005年に新装版。フライフィッシングの世界観を変えたといわれる古典。