水産庁産業管理外来種のパブコメを書きます。提出は7.14までです。
ニジマス、ブラウン、レイクトラウトの釣りが好きな釣り人は、税金だと思って書いた方がいいです。次号112号の入稿直前で死にそうな編集部も、正直超めんどくさいのですが、遊漁料だと思って書きます。
今回提示された「産業管理外来種の管理指針(案)」の項目ごとへ、具体的に意見するのがコツです。
外来生物法を撤回せよ、とかは気持ちは分かるけど、そんなこと言われても水産庁の人もきっと困るので、スルーされるだけ。環境省と水産省じゃ、力関係が違いすぎます。法律をつくるのは行政じゃないし。
同様に、産業管理外来種なんて意味ないよ、という意見も、「ご意見いただきました」とスルーされるだけ。〝そもそも論〟をパブコメで送っても、「なにを今さら言われましても」とスルーされると思っていいです。
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1)
たとえば、「産業管理外来種の管理指針(案)」で提示されている、(強調引用者)
2.主な主体の役割と具体的な取組 の中の
(2)遊漁関係者 ① 遊漁関係者
遊漁関係者は、原則として、公有水面における産業管理外来種の放流は自粛する。現時点において、公有水面で何らかの放流活動を実施している場合には、当該公有水面を管轄する都道府県や関係する共同漁業権者に相談するとともに、水産試験場等研究機関の助言を得た上で、対応を検討する。
に対して、
意見: (2)遊漁関係者 ① 遊漁関係者 について
①遊漁関係者における記述「公有水面における産業管理外来種の放流は自粛」は、水産基本計画の主旨に反している。かつ、内水面漁業振興法の理念にも反している。
水産基本計画には、「内水面漁業の有する多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるよう、内水面漁業者と地域住民等が連携して行う内水面に係る生態系の維持・保全のための活動等の取組を支援する。」とある(P.25)。
日本の内水面漁業は、漁業者はもとより地域住民、遊漁者の連携があって成り立つと水産庁はかねてから明言している。ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトは内水面漁業経済の要となっている重要水産魚種である。
とりわけニジマスは過去130年以上も国策で増養殖がすすめられてきた日本の内水面漁業の最重要魚種のひとつである。現在、全国各地でお祭り、地域おこし、子ども会イベントなどでニジマスの放流が行なわれており、人気が高い。ニジマスは入手のしやすさ、歴史などの点でも他魚種への代替性はない。
水産基本計画の理念にのっとれば、三魚種の内、少なくともニジマスを生産者、漁業者、遊漁者、地域住民をつなぐ代替性のない重要な水産資源として、今まで通り、いや今まで以上に利用していくべきことは、水産行政が選択するべき方向性として自明である。
しかるに、指針に、「公有水面における産業管理外来種の放流は自粛」と示すことは、原則としてという断り書きを入れるにせよ、漁業者と地域住民等が連携して行うはずの、内水面多面的機能の発揮のための取り組みの妨げとなる。内水面漁業の維持と振興を、明確に阻害するものである。
「遊漁関係者は、原則として、公有水面における産業管理外来種の放流は自粛する。」の削除を求める。
とか書くのはありです。
そもそも論としては、水産庁は国会から承認を得た水産基本計画にそって仕事をすすめているのだから、水産庁の指針が水産基本計画からずれていては、大いにまずいわけです。
平成26年6月20日に成立したばかりの、内水面漁業振興法というのもあって、れっきとした法律です。「産業管理外来種の管理指針」が、内水面漁業振興法の主旨を反映していないとすれば、それは水産基本計画からずれている以上に大問題です。
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2)
2.主な主体の役割と具体的な取組
(2)遊漁関係者 ② 管理釣り場の管理者及び経営者 では、
産業管理外来種を扱う管理釣り場の管理者及び経営者は、当該釣り場施設から産業管理外来種が逸出しないよう努めるとともに、私的放流の端緒となる蓋然性の高い生体が持ち出されることがないよう適切な措置を講ずる。
とあります。ですが、ニジマス、ブラウントラウトを放流している管理釣り場には、河川型の管理釣り場も多くあります。そんなところで「産業管理外来種が逸出しないよう」努めよ、と言われたって、そりゃ無理な話です。ですから、
意見: ② 管理釣り場の管理者及び経営者について。
「管理釣り場の管理者及び経営者は、当該釣り場施設から産業管理外来種が逸出しないよう努める」とある。しかし、日本国内の管理釣り場のほとんどは、上記の対策をとり得る環境にない。実効性の伴わない指針は無意味である。当該箇所の削除を求める。
もありかと思います。
つまり、税金の無駄づかいしないでね、と言っています。
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3)
4.新たな利用の取扱い では、
産業管理外来種の分布域の拡大を招く可能性のある利用に繋がるような第5種共同漁業の新たな免許(既存の漁業権漁場において第5種共同漁業の対象魚種として産業管理外来種を追加する場合を含む。)は、行わないことが望ましい。
と言っています。
つまり、ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトへ漁業権は新しく認可するな、と都道府県知事へ言っています。漁業権は10年ごとの切り替えです。新規の免許認可をするな、という水産庁指針は、次の漁業権の切り替え時に、いままであったニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトの漁業権を、継続しない、ということにもつながるでしょう。それが行政というものです。
この項目は、水産基本計画で宣言している以下のお題目と、真っ向から矛盾しています。
「我が国周辺の豊かな水産資源を適切に管理し、国民に安定的に水産物を供給していくことの重要性が高まっている。」 (P.1)
「漁村地域においては、水産業とその関連産業が経済の中心となっている場合が多い。これらの地域における経済活動の水準を維持・向上させ人口減少と地域経済の縮小を克服するためには、水産業において、若い世代が、ワークライフバランスを確保できる労働環境と将来を見据えて安心して家庭を築くことができる所得を、安定的に提供すると同時に、高齢者にもその能力に応じて生き生きと役割を果たす場が与えられる必要がある。これによって、地域における資源を最大限活用して働き方改-2-革や地方創生に資すると同時に国民経済の発展に貢献する。」 (P.1)
水産庁の役目は、水産業の維持・振興・発展です。その水産庁が漁業権者を減らす可能性のある行政指針を示すのは、まったくもっておかしい。水産庁が漁村経営の足を引っ張ってどうする。なんのためにいるんですか。
内水面漁業振興法はその基本理念で、「内⽔⾯漁業の振興に関する施策は、内⽔⾯漁業の有する⽔産物の供給の機能及び多⾯的機能が適切かつ⼗分に発揮され、将来にわたって国⺠がその恵沢を享受することができるようにすることを旨として、講ぜられなければならない」とうたっています。
「産業管理外来種の管理指針(案)」の、4.新たな利用の取扱い は、内水面漁業振興法の理念にも反しています。
まとめると、
意見: 4.新たな利用の取扱い について。
4.新たな利用の取扱い で、「第5種共同漁業の新たな免許(既存の漁業権漁場において第5種共同漁業の対象魚種として産業管理外来種を追加する場合を含む。)は、行わないことが望ましい。」と言っている。これはニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトへの漁業権の認可を阻害する。
現存する漁業権の切り替え(継続)時にもマイナス要因となり、短期的にも中長期的にも、漁業権者数、漁業者数、遊漁者数を、減少させる。ただでさえ衰退傾向にある日本の内水面漁業の崩壊に直結するもので、とうてい認めることはできない。
水産基本計画および内水面漁業振興法では、水産資源の健全な利用が漁村経営の発展に資する旨を理念としている。4.新たな利用の取扱い は、水産基本計画および内水面漁業振興法へも明らかに反している。
水産業の維持・振興・発展を大義とする水産庁が、水産の本質に反する指針を示すことはまったく理解できない。
現在、漁業権にもとづく増殖義務で、あるいは遊漁・観光目的で、ニジマスの成魚放流が各地で行なわれている。しかしこれらの放流成魚は放流直後にほとんど釣りきられている。河川に放流されたニジマス成魚が生き残って自然繁殖する可能性は、ほとんどないことを示す水産研究論文が、複数発表されている(加藤憲司など)。
ニジマス放流をこれまで通り継続しても、在来種の生息に影響を与える可能性は低い。
「4.新たな利用の取扱い」の削除を求める。
くらいは言っていいと思います。
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わたしはこんなふうにパブコメ書いて出そうと思います。
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水産庁産業管理外来種のパブコメ提出期限は、7.14です。
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以下、「産業管理外来種の管理指針(案)」の内容を転記します。
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(案)
平成29年 月 日
水産庁
水産分野における産業管理外来種の管理指針
1.基本的な考え方
「外来種被害防止行動計画」(平成27年3月26日環境省・農林水産省・国土交通省策定。以下、「行動計画」という。)では、産業において利用される外来種について、すぐに利用を控えることが困難な場合には、外来種の利用量を抑制する方法の採用や、生態系への影響がより小さく産業において同等程度の社会経済的効果が得られるというような代替性がないか検討し、利用量の抑制が困難である場合や代替性がない場合は、適切な管理を行う必要があるとしている。
こうした基本認識の下、ニジマス、ブラウントラウト及びレイクトラウト(以下「ニジマス等」という。)については、水産業のみならず地域経済の活性化に広く貢献しているが、元々は我が国の在来種ではなく、不適切な管理の結果、管理地外に逸出した場合は生態系等に被害を及ぼすおそれもあることから、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」(平成27年3月26日環境省・農林水産省策定。以下「外来種リスト」という。)において、「適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)」に位置付け、利用する際の適切な管理を求めているところである。
このため、ニジマス等については、利用量を抑制する方法の採用や、生態系への影響がより小さく産業において同等程度の社会経済的効果が得られるというような代替性がないか、引き続き検討を続けていきつつ、その利用に当たっては、外来種リストの利用上の留意事項の「これ以上の分布拡大をしない」に沿った管理とする必要がある。
2.主な主体の役割と具体的な取組
水産分野における産業管理外来種に特に関わりの深い主な主体においては、水産庁の協力の下、以下に示す取組のほか、相互に連携して、産業管理外来種の利用や管理に関する適切な理解と必要な情報の共有に努める。
(1)漁業関係者
① 漁業協同組合
第5種共同漁業の免許を受けた漁業協同組合には、対象魚種の増殖義務が課せられている。当該漁業協同組合が増殖行為の1つとして産業管理外来種の放流を- 2 -実施するに当たっては、在来種の繁殖保護にも留意する。
また、ニジマスやブラウントラウトは降海して他の河川に生息域を拡大したり在来種と交雑する能力を潜在的に有している実態を踏まえ、関係する都道府県(水産試験場を含む。)及び内水面漁場管理委員会と協力して、対象魚種の分布や再生産の状況、当該漁業権漁場からの移動(地域によっては降海魚の存在を含む。)及び交雑種の有無等に関する情報の収集に努める。
② 養殖業者
産業管理外来種を扱う養殖業者は、当該養殖施設から産業管理外来種が逸出しないよう努めるとともに、生体販売を行う際には、私的放流に利用されることがないよう購入者に対してその用途等を確認する。
(2)遊漁関係者
① 遊漁関係者
遊漁関係者は、原則として、公有水面における産業管理外来種の放流は自粛する。現時点において、公有水面で何らかの放流活動を実施している場合には、当該公有水面を管轄する都道府県や関係する共同漁業権者に相談するとともに、水産試験場等研究機関の助言を得た上で、対応を検討する。
② 管理釣り場の管理者及び経営者
産業管理外来種を扱う管理釣り場の管理者及び経営者は、当該釣り場施設から産業管理外来種が逸出しないよう努めるとともに、私的放流の端緒となる蓋然性の高い生体が持ち出されることがないよう適切な措置を講ずる。
(3)都道府県・内水面漁場管理委員会
① (1)①及び②の者並びに(2)②の者に対し、産業管理外来種の管理に関する取組が円滑に行われるよう適切な指導・監督に努める。
② (2)①により、遊漁関係者から放流活動に関する相談等を受けた場合には、必要に応じて水産試験場等研究機関と連携して、他の水産資源等に与える影響等地域の実情に応じて指導・監督を行う。
③ 調査や研究に関係する部局は、産業管理外来種の分布や生態等に関する知見の更なる把握に努める。
(4)試験研究機関
産業管理外来種の分布や生態等に関する知見の更なる把握に努める。また、産業管理外来種を育種実験等に利用する場合には、当該研究施設から産業管理外来種が逸出しないよう努める。
3.公的規制による対応
以下に該当する場合には、地域の実情を踏まえ、必要に応じて内水面漁業調整規則- 3 –
や内水面漁場管理委員会指示等により産業管理外来種の移植を禁止する等の措置を講ずることとする。
(1)生物多様性の保全上重要な水域がある場合や、北方の高地や湖沼においてレイクトラウトの分布拡大を防ぐ必要がある場合
(2)ブラウントラウトについて、生息水域が拡大し、在来種との交雑種が確認されるなど、水産資源の保護培養上の懸念がある場合
4.新たな利用の取扱い
産業管理外来種の分布域の拡大を招く可能性のある利用に繋がるような第5種共同漁業の新たな免許(既存の漁業権漁場において第5種共同漁業の対象魚種として産業管理外来種を追加する場合を含む。)は、行わないことが望ましい。ただし、個別の状況等に照らし、その是非を慎重に検討する必要があるため、各都道府県におかれては産業管理外来種の新たな利用に関する問合せがある場合には、事前に関係研究機関等と十分に相談するとともに、水産庁資源管理部漁業調整課に連絡することとする。
5.その他
水産庁は、関係機関や上記に示した各主体と連携して、引き続き、産業管理外来種を巡る状況の把握に努め、適時、必要な対応を検討していくこととする。
・・・・・転載終わり・・・・・