テレビ東京の〈液体グルメバラエティーたれ〉で、宮崎県高原町でつくられている〝じゅんばあのタレ〟が大々的に紹介されました。
〝じゅんばあ〟と聞いて、ピンと来た読者もいらっしゃるかもしれません。
『山と河が僕の仕事場』で牧さんを勇気づけ、応援し、いつも温かく見守ってくれている〝じゅんばあ〟は、牧浩之さんの義理のお母さんです。
『山と河が僕の仕事場』ではこんな風に書かれています。
初めての彼女の実家
高原町へ到着する頃には雨も止み、雲の隙間からところどころ、晴れ間が顔をのぞかせた。
実家の敷地に入り車を止めた時、勝手口の扉が開いて、中から弘子のお母さんが出てきた。
その手には包丁が握られていた。
「うそ? やっぱ僕は来ちゃいけなかったんじゃないのか!」
一瞬たじろいた僕の動揺を察したのか、お母さんは笑顔で挨拶してくれた。今晩の鶏鍋のために、家庭菜園の白菜を収穫しに行くところだったらしい。
だがお父さんには、僕はどう思われているのだろう。弘子は3きょうだいの末っ子で、たった一人の娘である。
僕の緊張がピークに達したその時、玄関を開けてお母さんが中に叫んだ。
「弘子がダンナ連れてきたぞー!」
山と河が僕の仕事場1|頼りない職業猟師+西洋毛鉤釣り職人ができるまでとこれから
第一章 川崎生まれ、東京湾育ち
弘子の実家には巨大なかまどがあり、お母さんが「じゅんばあのタレ」と名づけた調味ダレを作るのに使われている。九州しょうゆをベースにカツオやシイタケなどでだしをとりながら、じっくりと煮込んだ甘辛いしょうゆだ。
これ一本で牛丼や肉豆腐、すき焼きなどが作れる万能ダレとして人気で、高原町のふるさと納税品にも採用されている。僕たち夫婦にとってはおふくろの味だ。
タレ作りは一日がかりだ。大鍋に材料を入れ、薪で火をおこして炊き上げる。炊き上げるときは焦げつかないように、かまどの前で火の番をしながら時折、鍋の中をかき混ぜる。
ガスのように火力が一定ではないので、火の勢いを見ながら薪を足したりして調整する。冬は暖かくていいが、夏は本当に大変な作業だ。
山と河が僕の仕事場1|頼りない職業猟師+西洋毛鉤釣り職人ができるまでとこれから
第四章 山と河と人がつながる暮らし
..我が家では自家栽培のシイタケはなくてはならないものだ。弘子のお母さんは「じゅんばぁのタレ」という調味料を作って販売している。九州の甘口醤油をベースに、カツオやシイタケなどで出汁をとった万能調味料だ。
安心できる素材をという思いで国産素材を使っているが、国産の乾燥シイタケは値段が高騰することが多い。大量に使うのでコスト削減も兼ねて、畑の横の木陰で自家栽培していた。
じゅんばあのタレは煮物やつゆもの、牛丼の具などの味つけがこれ一本でできてしまう便利さが受けて、地元で人気だ。
高原町のふるさと納税返礼品にも採用されており、全国各地から注文が入ってくる。シイタケが採れないと死活問題に関わる。カブトムシどころの話じゃない。
..お母さんも毎月、軽トラ市に出店している。じゅんばあのタレに漬けこんだ地鶏の肉を使ったから揚げと、タレをベースに工夫して作った南蛮ダレをからめたチキン南蛮は大人気で、お客さんが並んで揚げ物が追いつかないこともある。
軽トラ市は地元の交流の場にもなっていて、弘子もここでよく同級生とばったり会うらしい。僕もよく遊びに行ったり、少し手伝ったりするが、高原町に長く暮らしている人たちとは、釣りや狩りの話で盛り上がる。
山と河が僕の仕事場2|みんなを笑顔にする仕事
第四章 今度は畑を始める
〝じゅんばあのタレ〟が番組「たれメンタリー」の第一話! 現在、テレビ東京のウェブサイトで見逃し配信中です。全篇を視聴できます。(便利な世の中になりました) ここではスクショで紹介します。