昨夜、夕ご飯を食べ終えてこたつでくつろいでいたとき、携帯電話が鳴った。
「どうも。今日ワカサギ400匹でましたよ!」
いつも通っている河口湖ボート屋さんからの直電であった。電話の向こうの声が弾んでいた。
私とそのご一行様は昨秋から数えて10回近くも河口湖へ通い詰めている。が、精一杯努力しているにもかかわらず結果が出ず、もしやこのまま引退かという瀬戸際まで追いつめられている。ボート屋のお兄さんは河口湖漁協で一番いい男との声が高い好青年だ。そんな私を気にかけてくれていて、いい情報が入ったらすぐにお伝えしますよと以前から約束してくれていた。待ちに待った最新とれとれ情報がその電話だったというわけだ。
本当のことをいうと、こっちはせっかちなもので、これまでお兄さんからの情報がなくたって今度こそはと河口湖へ勝手に通いつづけ、撃沈につぐ撃沈を繰り返していたのである。お兄さんはいつものにこやかな笑顔のうらで、(だから釣れてないですって言ってるのにぃ)と、地元漁協として内心忸怩たる思いをしていたかもしれない。それがやっと「400匹」だからお兄さんも勢い込んでいた。
お兄さんの激アツな最新情報をうかがいながら、私は無意識のうちに部屋の壁の時計を見上げた。19時半ちょっと前だった。まだ上州屋さんあいてるね。アカムシ買えるじゃん。いったんそう思いついたら身体の芯がじゅんと濡れた。明日行こうか、行っちゃうか。
良い釣りの情報には可及的速やかに対応するのが、良い結果を得る鉄則であるのは言うまでもない。私はぬくぬくのこたつを抜け出て八王子駅前の上州屋さんへ向かった。目的はもちろん活きのいいアカムシである。ワカサギのためならなんだってやるさ。
で、翌日(つまり今日)、行ってきました河口湖。結果はどうだったかというと、まあ、ね。具体的な数字を口にするのは少々お下品かと思いますので、ご想像にお任せいたします。フッ。