泣きべそなんてさよなら、ね。

ただいま編集部は次号制作の最初の山場へさしかかろうとしている。連絡がとれなかったり雲隠れしたりする常連寄稿者に、毎度のように心底やきもきさせられるのがちょうどこの時期だ。

でも今日言いたいのはそういうことではない。『フライの雑誌』の創刊時からの名物連載企画に「隣人のフライボックス」がある。次号の「隣人のフライボックス」には同年代のI氏をお願いしており、昨日届いたそのボックスがすごかった。

この人にはぜったいかなわないと一目見た瞬間に負けを認めたくなるフライボックスがあるものだが、I氏のボックスは並べられたフライのくたびれ具合、フォームの錆具合、サイズやカラーのバリエーションの必要十分さ具合などが、彼がこれまでどれだけの釣りの修羅場をくぐってきたかを物語っていた。この人は釣る。まあ「隣人のフライボックス」に登場していただく方はみなさんI氏とどっこいどっこいに常軌を逸した方ばかりではあるのだが。

で、I氏にこれも恒例の「ピックアップ6本」を選んでもらい、フライ写真に添えるキャプションを書いて送ってもらった。その中の1本、ヘッド部をエポキシでキャンディタイプに固めた小さなストリーマーのキャプションがこれだった。

●キャンディ・キャンディ #10〜8
Body:マイラーチューブ等 wing:フラッシャブーなど数色を適当に eye:ルアー用アイをエポキシなどでコーティング。なるべく華奢に作ること。場所と対象魚を選ばずにいつでもどこでも使用頻度が高いので僕のボックスではいつも品薄状態。釣れないときこう言うの、笑ってキャンディー。

1970年代後半に多感な少年時代を過ごした私が、この最後の一文を見逃すはずはない。その瞬間、そのアニメ番組のオープニングテーマが遊園地のメリーゴーラウンドのようにグルグルと脳内を走り出した。もうとまらない。さっそくyoutubeで検索したらどこかの親切な方がしっかりと動画をアップしていてくださっていた。うれしくなって液晶モニタの画にあわせて繰り返し大声で歌った。

歌いながら当時のあんな思い出やそんな恥ずかしい出来事が、不意にこめかみをかすめていった。自分が天才バカボンのパパの年齢を越える日が来るだなんて、あのころは全然想像できなかったんだ。ありがとうI氏、なんだか僕はすこし涙ぐんでしまったよ。

繰り返すが、ただいま編集部は、次号制作の最初の山場へさしかかろうとしているところだ。

以上。

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