じつは今週はじめに山中湖へワカサギ釣りに行きました。
サービス、実力ともに山中湖一との声が高い湖明荘の大型ドーム船で、早朝6時から午後2時までみっちり釣った。暖房、トイレ、ポット、電子レンジなど設備は完ぺき。昼間はシャツ1枚でよかったほどでぬくぬくと快適極まりない釣りだった。釣果のほうも3人で6束を超えたので、ワカサギ釣りではこのころスランプ気味の我が家は手を取り合ってよろこんだ。
机の脇のスケジュール表を確認するまでもなく、今は『フライの雑誌』次号制作の追い込みの時期である。私がたのしくワカサギを釣ったその日が原稿の締め切り日だった寄稿者の方が何人かいらっしゃるはずだ。
皆さんの締め切りの日、私は朝3時に起きてワカサギの餌の紅サシをハサミでカットしていた。さらには電動リールとセットで最近購入した超軟調の穂先を無言で注視して、微妙なワカサギのアタリをとってのせるのに夢中だった。
しかもその夜は6束のワカサギをぜいたくに使ったうまうま天ぷら大パーティを催した。釣りから帰ったら仕事しようかなと思っていたけど、朝が早かったのでビールを飲んだらもちろんすぐに寝てしまった。だってワカサギの揚げたて天ぷらにはビールだ。
ブッチした。釣った。食べた。うまかった。という幸せな一日だった。
ウサギは寂しいと死んでしまうそうだが、釣り雑誌の編集者は釣りをしていないと死んでしまう。だからお願い許してね。
とはいえ、やはり良心はちくっと痛む。だから言います。締め切り抱えた寄稿者の皆さん、私ばかり楽しい釣りをしてごめんなさい。原稿終わればそのうちきっといいことありますよ。
ちなみにその夜、横になって目を閉じると、まぶたの裏にほそいシルエットが映って先っちょがぷるぷる震えている。なんだこれと思ってよく考えたら、今日一日見つめていたワカサギ竿の穂先だった。
ふとんの中で思わずアワセたりなんかして。