10月6日、秩父漁協の内田さんの手伝いで、埼玉県荒川支流中津川での人工産卵場造成へ。毎年欠かさず参加している仲間の〈カウンターアソールトけんじ〉さんの記録によると、初年度が2005年なので今回で14シーズン目。人間重機の内田さんはそのさらに2、3年前からたったひとりで、地元の秩父の沢で人知れず力仕事をしていた。
内田さんが人工産卵場の発想を知ったのは、当時の〈フライの雑誌〉誌上の『イワナをもっと増やしたい!』中村智幸さんの連載だった。相談する相手もいないので、自分も組合員である秩父漁協に話を通して、とりあえず試しに一人でやってみたのが最初。毎年毎年、造成方法をバージョンアップしている。後年、中村さんから「秩父方式」と認定された。たぶんいまもっとも現場に即した人工産卵場作りの経験と知識をもっている。
魚を釣りたいがために釣り人がはたらくことの本質は、ひたすら地味な作業の長年の積み重ね。一日だけの派手なイベントやきらびやかなお祭りとはちょっとちがう。
もっともすごいと思うのは、ぼくらはそれこそ、内田さんにぜんぶ場所も道具も準備してもらって、1日だけ仲間で集まって、ごそごそとシャベルでかき混ぜて「やったやった」と喜んで、あとは七輪でおいしいものを焼いて食べるだけだが、人工産卵場造成で本当に大事なのは、そのあとのメンテナンス。ちゃんと流量が保持できているか、落ち口が落ち葉で詰まっていないか、大雨で崩れたら別の場所に作り直す(!)。
などなどの地道でたいへんな継続作業があってこそ、ヤマメさんやイワナさんが安心してお産卵してくださる。真似できないっす。その結果は中津川キャッチ・アンド・リリース釣り場での現状につながっている。〈フライの雑誌〉第117号で紹介した。今年行ったんですが、あんなに魚影が濃い川はそうない。もちろんぜんぶ自然繁殖魚。いやすごい。

人工産卵場造成をはじめた当初から参加している、最初は幼児だった近所の男の子。いまは高校生になって貴重な戦力に。でいうかもう体力的に完全に負けました。あとは若い人に。

じつはこの場所も事前に内田さんがぜんぶ段取りしてくれてあった。たぶん内田さんが一人でやったほうがずっと早いし楽だし。ぼくらはお手伝いというより、どっちかというと内田さんの邪魔しているみたいなもの。

「わざとらしいくらい」きれいに完成した人工産卵場。改めて確認しておくと、人工産卵場はないに越したことはない。堰堤を作ってしまったこの沢には産卵場に適した場所がないので、人間が罪滅ぼしみたいなもので人工産卵場を作らせてもらっているだけのこと。けして威張れることじゃありません。じつは内田さんは数日前に一人で来て「フルパワーで」三ヶ所作った、四ヶ所目でパワーが切れたとのこと。すげえ。

6人で秩父ホルモン(内田さん謹製)2kg、ソーセージ1kg、塩豚1kg、キャベツ半個、焼きまんじゅう8個、鹿児島・中馬さんアカカマス干物6匹を食べ尽くした。

今日友人から届いた。「シャインマズカット」とマジックで箱書きしてある。「なまってるんですか」と聞いたら「んあ、シャレだ」。

すんげえおいしい。おれがつくった雑誌も来週でます。

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「ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線」 ※ムーン・ベアとはツキノワグマのことです。


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