え、なに? 長年渓流釣りをやってきて、こういうものに川で出くわしたのは初めて。集落の脇を流れている里川です。
以下は、フライの雑誌社発行の面白クマ本『ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線』(山﨑晃司著)からの抜粋です。
〝森のあるところ、クマがいる〟 P.32
日本のクマは何頭いるのか
近年、科学的にはまだ検証の余地を残すものの、本州のツキノワグマ、北海道のヒグマの生息数は、多くの地域で増えている可能性が指摘されている。
1970年代終わり頃までは、クマ撃ちの猟師は奥山に分け入ってクマを探す必要があったものが、最近は前山と言われる集落の近くでも容易にクマが発見できるという話もよく聞く。
この15年間ほどの間、本州で繰り返される人とクマとの壮絶な軋轢事例を振り返っても、クマが増えているらしいことが実感できる。
日本にどれくらいの数のクマ類が生息するのか、これは誰もが知りたい情報だ。保全や管理のための基礎中の基礎となるからだ。
〝身近になったクマとの付き合い方を考えよう〟 P.38
…人々が散歩やジョギングを楽しむような里山域でも、今やクマと鉢合わせをする可能性があることを教えてくれる。クマは身近な動物になっていることを、改めて肝に銘じる必要があるということだ。
出没場所も神出鬼没だ。2010年10月中旬には、富山県富山市の海岸で釣りをしていた男性が、まだ夜の明けぬ早朝に背後からツキノワグマに襲われるという、状況の理解に苦しむ事故が起きた。さらには、群馬県桐生市内や長野県長野市内といった、まさに街中を、クマが駆け抜けたりもしている。
これらは極端な例だが、クマの分布の最前線は、すでに相当に人里に接近していることを伺わせる。
〝クマと遭ったらこうなった〟 P.47
視界の隅に、まさに私の足元に、艶やかな黒髪の人間が寝転がっているのが入った。
刹那のことだったと思うが、「ああ、何でこんなところに人が寝ているんだろう」と状況を把握できないその中で、その人間はむっくりと起きあがってこちらに顔を向けた。
まだ信じられない気持ちの一方で、もう一人の私が妙に冷静に、「これはクマだ」と判断しているのが分かった。「クマに遭っても決して走って逃げるな」。先輩の言葉が脳裏に浮かんだが、その時の私の行動はまったく真逆であった。…
〝日本のクマ類管理の方向性〟 P.228
少なくとも、本州でのツキノワグマの分布の最前線は、森のあるところほぼすべてに拡大しているように見える。森があってまだクマの入っていない場所は、もはや、クマの移動が制限されている一部の半島だけかもしれない。
こうした現象は、クマほどではないにしても、イノシシ、シカ、サルも似通っている。イノシシ、シカの場合は、積雪が分布の制限要因と考えられた時期もあったが、今や北陸や東北へもじわりじわりと分布を広げている。
クマを減らせばいいわけではない
上の写真の話に戻ると、今まで渓流釣りの途中で、哺乳類ではホンシュウジカ、エゾジカ、カモシカ、イノシシ、タヌキ、キツネ、ネコ、イヌのご遺体に出くわしてきた。その度ごとにひゃーとなったが、今回は一番へんな声がでた。
まさかこんなところにクマが、と思った。まったく警戒していなかった。日本のクマの生息域が拡大しているから? それとも、クマ本を編集したから呼ばれたのかなあ。
森のあるところ、クマがいる。クマはどこにいるの、クマと遭ったらどうするの、日本のクマのこともっと知りたい。大人気の面白クマ本『ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線』(山﨑晃司著)はたいへんおすすめです。
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フライの雑誌社では、ここに来て日々の出荷数が増えています。「フライの雑誌」のバックナンバーが号数指名で売れるのはうれしいです。時間が経っても古びる内容じゃないと認めていただいた気がします。そしてもちろん単行本も。
島崎憲司郎さんの『水生昆虫アルバム A FLY FISHER’S VIEW』は各所で絶賛されてきた超ロングセラーの古典です。このところ突出して出荷数が伸びています。