スティーブ・ヘレロ博士の本『ベア・アタックス』は、北米における、主にヒグマとアメリカクロクマによる人身事故を取りまとめたものだ。当然ながら、北米以外の国々に分布するほかのクマの仲間も、人間に対する攻撃能力を持っている。
愛嬌に満ちたパンダだって、人間を襲うことがある。むしろ、あのたれ目を強調するような目の周りの黒縁が、パンダの表情を隠ぺいしてしまい、攻撃の兆候をつかめずに厄介という話がある。
相手の雰囲気だけに惑わされてはいけないというセオリーは、クマにも適用される。
そうはいっても、8種のクマそれぞれの人間を攻撃する理由に多少の相違はあっても、食べるための攻撃の割合が極めて小さいことはたしかだ。
(『ムーン・ベアも月を見ている』(山﨑晃司 3- 2 クマが人を攻撃するとき 56ページより)
秋になり、今年も日本各地でクマと人間との接触が話題になっている。釣り人による目撃談も多い。事故があると、すぐさま「クマに襲われました。」とセンセーショナルに報道される。クマと人間との接触事故が、「クマに襲われました」の論調で統一されていることには、ずっと違和感をもっている。
名著『Bear-Attacks』の原副題は「Their Causes and Avoidance」だ。邦副題は〈クマはなぜ人を襲うか〉になる。〈攻撃〉と〈襲う〉のニュアンスは異なるだろう。〈Avoidance=回避〉の語意も抜けている。
クマは人間に対する攻撃能力を持っている。だから好んで人を襲うのだろうか。
ツキノワグマの攻撃も、人間の捕食が目的であることはまずない。ほとんどの場合は、人間を怖い、あるいは邪魔とクマが思ってしまうシチュエーションでの、クマにとっての防衛的な攻撃なのだ。
皆さんが街を歩いていて、危ない雰囲気の人を数ブロック先に見つけたとしたら、少々遠回りでもそこを避けて移動するはずだ。でも、建物の角を曲がった時に、危ない人と鉢合わせしたらどうであろうか。まして、あなたが小さな子供を連れていたとしたら。
勇気を振り絞って子供を守ったり、あるいは危ない人を突き飛ばしたりして活路を見出すのではないか。ツキノワグマの行動もそれに似る。
(『ムーン・ベアも月を見ている』(山﨑晃司 3- 2 クマが人を攻撃するとき 57ページより)
もしわたしがクマで、おさない子供を連れて奥多摩あたりを散歩している時、イモータンジョーと予期せず遭遇したら、まずびびる。そして逃げたいと思う。
しかしジョーのあの顔が目の前にあり、もはや逃げられない状況と悟れば、大切な子供と我が身を守るべく、本当はいやだけど、身を賭してたたかうかもしれない。だってわたしには立派な爪と牙がある。
クマにとって人間はぜんぶイモータンジョーだ。
ジョーからすれば、〈襲われた〉ということだろうけれど、クマにしてみれば、「ちょっと待って、怖いのはあなたですよ。」だし、「ここはもともとわたしたちの街なんですよ。」と言いたいだろう。「なにも好きで襲ってるんじゃありませんよ。」と思っていると思う。
念のため、研究対象の動物を擬人化するのはよくないと、『ムーン・ベアも月を見ている』で山﨑さんは言っている。
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