『桜鱒の棲む川』サラマオマス台湾緊急特別調査報告 その1

日本海またはその原型に、500~3000万年前に出現したサクラマスの祖先から、180~300万年前にアジア大陸の東端に出現した第二瀬戸内海湖(現在の瀬戸内海と伊勢湾がその名残り)でサツキマス(アマゴ O.masou ishikawae)が出現した。…そして、その後内陸部にとり残された古琵琶湖(45万年前に最大最深となる)で、50万年または10~200万年前にビワマス(O.masou rhodurus)が分化した。

それ以降何回か繰り返されてきた氷河の前進後退の過程で、九州や本州西部日本海側では水温の低い高山部の渓流に残留するようにしてヤマメがサクラマスから分化し、現在サケの遡上する千葉県以北と島根県以北の河川でサクラマスは海と河川上流部を行き来し続けてきたが、サクラマスとヤマメの遺伝的分化は明確にはなっておらず、亜種として区別されることはない。また、東海黄海まで南下回遊していたサクラマスが台湾の高山地帯の渓流に200万年前の氷河期に残留し分岐したのが、サラマオマス(O.masou formosanus)だと考えられる。

以上を整理すると、現在ではサクラマスの祖先からサクラマス(ヤマメ O.masou masou)、サツキマス(アマゴ)、ビワマス、サラマオマスの四亜種が分化成立したことになる。ここでヤマメとアマゴは降海しない河川残留型として、成魚では明確に区別できる。しかし、サクラマスの雄では降海しないものもいて、・・・(『桜鱒の棲む川』内「サクラマスの起源を探る」水口憲哉より)

上記にもあるように、サクラマスの一族には、サクラマス(ヤマメ)、サツキマス(アマゴ)、ビワマス、サラマオマスの四亜種がある。中禅寺湖のホンマスはビワマスとサクラマスのハイブリッドとされているので、以上の四つの亜種の内、私が釣ったことがないのは南限に棲むサラマオマスだけである。

新刊『桜鱒の棲む川』がいよいよ発行直前となった。本書にはフライの雑誌社の持てる全力を傾けている。ならば発行前に、まだ釣ったことのないサラマオマスの棲む地をしっかり調査しておかなければならないと考えた。サラマオマスは現在、台湾山岳地帯の渓流部のみに生息している。そこで編集部では、緊急的に台湾へ飛んだ。(つづく)