宅八郎さんの訃報。
20代の半ば、行きつけの美容室で髪型を少し変えた。すると、「宅八郎に似てるね。」と中野のキャバクラで言われた。次回美容室へ行ったときに美容師さんが「評判いかがでしたか?」と聞いてきたのでそのまま報告したら、「うわ、まじでショック。あたしが担当してるのに。」と、本気で嫌がられた。
20数年前、江古田界隈のイカした学生さんが集まるカウンターだけのバーに連れられて入った。初対面のおしゃれなマスター(たぶん歳下)に、「君はなんのオタク?」と快活に聞かれた。わたしはなにも言葉を返せず俯いていた。明るいオタク(を標榜する人)は苦手だ。
たった2、3年前、高円寺の居心地のいいバーにいたら、一個あけた隣に座っていた若者の声が聞こえてきた。「うわあ、やっぱり中央線のお店って、諸星大二郎やつげ義春の作品が好きな人がいるんですねえ。うれしいなあ。」だって。
魚(ウオ)、と思ってマスターの表情をうかがうと、目が合って、小さくウインクされた気がする。酸いも甘いも噛み分けた大人のウインクだった。一流のマスターになる条件は、まず耳がいいことだ。
今、こんな立場にいると、素人さんからしばしば「マニアなんですねえ!」とからかわれる。そんなとき、自分はうにゃうにゃ言いながら、曖昧に微笑むだけだ。ほんまもののオタクとかマニヤってさ。説明するのめんどい。
ところで、今度から好きなプロレスラーに会ったら、「がんばってください!」じゃなくて、「応援してます!」って言おうと思う。わたしが好きなプロレスラーは、もうすでに、十分がんばっているわけだから。
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