『桜鱒の棲む川』サラマオマス台湾緊急特別調査報告 その3

台湾はふるくて新しい土地である。もっともふるい遺跡は旧石器時代のものであり、新石器時代にはすでに大陸との交流があったとされる。台湾は外部からの侵略を受けつづけてきた土地でもある。16世紀の明、オランダ、日本、清からの侵攻、占領、統治、現在の中華人民共和国からの軍事的脅しと、その歴史は厳しい。いっぽう言語と習俗を異にする数十以上の多様な先住民族があり現代もそれぞれの民族意識を誇りに暮らしている。

そんな台湾の成り立ちと歴史を、台湾が九州ほどの大きさの土地であることと考え合わせると、文化の密度が濃いというか、ちゃんぽん度が高い印象だ。「ちゃんぽん」の語源は中国福建語らしく、台湾へ渡ってきた漢民族は大陸の東海岸、福建地区から渡ってきた人々が多いとされている。だからここで「ちゃんぽん」という表現を使うのもまんざら何の関係もないわけではない。

今回行って肌身で感じたが、台湾の人々の熱気はすごい。ガンガンに発展している土地の勢いは全然違う。台湾にくらべれば日本の、とくに東京の人々は弱々しい。日出ずる処と日沈む処の差である。日本はやっぱり萌え〜で生き残るしかないとすら思える。

さて、こと食においては、ちゃんぽん度が高いことはよい結果へ向かうものだ。現代の台湾食文化は、華麗で深遠なる独自の発展を遂げていると世界的に評価が高い。台湾の人々は過去に諸外国から凄惨な侵出を繰り返されてきた。しかしその裏で、東インド会社時代のオランダ、フードマイレージ世界一の日本、テーブル以外の四つ足は全部食っちゃう中国、気候の近い亜熱帯東南アジア圏の、それぞれのおいしいところを取り込んできたのかもしれない。

思うに、台湾の小吃(シャオチー:軽い一品料理)は、おいしい物がいつも身の回りにたくさんあるために、台湾の庶民が「これをちょっと食べたい。こっちもちょっと食べたい。」という風に、少しずつ色々な種類をあれこれ食べられるようにと、発達してきた食文化ではないだろうか。食い意地の張った旅行者には、なんとありがたいことか。(つづく)

士林夜市にて。単位は元(約3円)。
これは新刊『桜鱒の棲む川』に関連した台湾サラマオマスの調査報告です。