文壇に異色の新星!
「そのとんでもない才筆をすこしでも多くの人に知ってほしい。打ちのめされてほしい。」(荻原魚雷)
真柄慎一 =著
装画 いましろたかし
解説 荻原魚雷
四六判 192ページ
本体1600円+税10% 定価1,760円
ISBN 978-4-939003-84-4
発売日:2021年3月15日
※店舗には2021年3月10日以降に並びます。
※少部数です。ご予約注文をお願いします。
※Amazonなど各書店・ネット書店でも扱われます。
僕は僕なりの素敵な大人になりたい。
──現代のニック・アダムス物語。
〝小遣いはなかなか貯まらず、竿は買えないまま。そして釣れないまま。それでも毎日のように川へ向かった。〟(「開げでみろ」)
さわやかな風を呼ぶ16の物語
紹介をいただきました
「良質な私小説の連作短篇として」
黄色いやづ 文壇高円寺|荻原魚雷さん(2021/03/16)
「本書中、一番好きなフレーズは、」
父への手紙 平和製作所|亮太さん(2021/03/18)
「これはよほどの腕前が必要ではないだろうか」
黄色いやづ daily-sumus2|林哲夫さん(2021/03/20)
「いかにもな〈東北親父〉が『んだ。』とか『あっぺ。』とか『いらね。』とか」
真柄慎一さんの「黄色いやべ」じゃなくて「黄色いやづ」|四釜裕子さん(2021/03/22)
「まさに打ちのめされました。これはいいですよー!」
【本日の一冊】|『本の雑誌』さん @Hon_no_Zasshi (2021/03/30)
「畏怖と羨望を感じる。」
ヘミングウェイを越えたハードボイルドな釣り小説|熟読乱読 世相斬り 日刊ゲンダイ 連載98 大岡玲さん(2021/03/30)
「閉塞感ただよう昨今の世相を吹き抜ける爽やかな風」「珠玉の作品集」
つり本ガイド|「釣具界」紙さん(第2001号 2021/04/05)
「劇的な事件は起こらない。大物を釣るわけでもない。それでも、収録作はとても滋味深い。木訥ぼくとつとした文章から、釣りとともに生きる喜びが伝わってくる。」
[記者が選ぶ]4月11日|読売新聞 日曜書評さん(2021/04/11)
「釣りを愛する人の心には、いつも川が流れているのかもしれない。」「人生の真ん中に、いつも釣りがある。それがうらやましい。」
毎日新聞 書評欄|和田靜香さん(2021/06/05)
「ニック・アダムスはアーネスト・ヘミングウェイの短篇連作の主人公の名前。ニックが子供から青年、そして父親になるまでの話を十年以上にわたって書き継いでいる。…
真柄さんは感情の記憶がとても豊かだ。だから読んでいると過ぎ去ってしまった少年時代のことや人生の節目節目のあれやこれやをしみじみと思い出す。…
真柄さんの人生讃歌はまだまだ続く。今のところ、十年に一冊ペース。もっと書いてほしい気持とこのままのんびり書いてほしい気持が半々。ヘミングウェイも〝心からやりたいと思わないなら、やめておけ〟といってますからね。気長に待ちます、次作も。」
(荻原魚雷「解説」より)
【目次】
開げでみろ
たらし釣り
黄色いやづ
一生懸命
あの頃の電車通い
そんなたいそうな
大人になりたい
頑固者
クルクルかして〜
やったー、やったー
幼なじみ
コート掛け
この夏のオイカワ釣り
親孝行
かっちゃんのお城
だから釣りに行く
・・・
東北親父は余計なことはしゃべらない。本当に悪気はない。
聞けばなんでも教えてくれるし、ウソも言わない。冗談を言わない照れかくしとして、一言、二言だけをゆっくり話すのではないかと僕は思っている。
「どこが釣れそうですかね。」
「左行って、すぐ右行げ。」
「左に向かって次の十字路を右ですか。」
「んだ。」
「そのまま行くと」
「橋があっぺ。」
「橋があるんですね。」
「その上の淵だ。」
「はい。ありがとうございます。そこに行きます。遊漁券ください。」
「今日はいらね。」
「いやっダメですよ。」
「もうそろそろ夕方だ。いらね。」
「いやいや。」
「あんちゃんはフライだべ、釣っても全部逃がすんだべ、券はいらね。」
おじさんは早く行けっと手振りした。
(「黄色いやづ」より)