編集部の電話が鳴ったら

発送代行の営業さんからの電話だった。フライの雑誌社のウェブサイトを見て電話してきたとのこと。発送費が絶対安くなります。見積もりだけでもぜひ出させてください、とていねいにおっしゃってくださる。以下、私と営業さんとの会話。

「私どもはひとさまへ発送代行をお願いできるような会社ではないんですよ。創刊から24年めになりますが、基本的につつましく身内でできることだけ、やりたいことだけを細々と続けてきたので、いままでなんとか生き延びさせていただいたようなものなのです。関わってくださっているスタッフも基本的にはもともと『フライの雑誌』の読者だったり、関係者さんだったりします。あまりお金の問題ではないんですよ。あなたフライフィッシングはしますか?」
「いいえ」
「そうですか。じつは印刷所の担当者さんもフライフィッシングをするんですよ。みなさん仲間内なんです。まあそういうことなので、ごめんなさい。」
「じゃあこんど私もフライフィッシングを勉強します。」
「ええどうぞ。勉強するものでもないですけどね。ぜひぜひ。楽しいですよ。」

電話の向こうの青年の声がきもちよくて、口調も好ましかったので、なぜフライの雑誌社が発送をひとさまへ外注しないか(できないか)の理由を、ついこと細かに説明してしまった。

しかしながら私は会ったこともない営業さんへなんで電話口で身の上話みたいのを語ってるんだろう。受話器をおいた後にふと気づいた。

じっと手を見る。