近所の子供「うう。」

近所の子供A君とは、彼がまだ園児の頃から、私の仲間と一緒に釣りやキャンプで色々遊んでいた。長い付き合いだ。今年17歳になったと思う。ここ数年は忙しいらしく、釣りはご無沙汰だ。

高校生になったA君と、公園の角や土手の上でたまに顔を合わせる。制服姿の彼にこっちからあいさつすると、無表情で「うう。」とか「うあ。」とか言うだけ。急ぎ足で去っていく。

夏のはじめの夕暮れ、ハヤ釣りの帰り、川にかかる橋で、高校から帰宅する途中のA君と偶然会った。なんと私に気づかないふりをして通り過ぎようとした。同じ橋の上なのにそれは無理がある。「おーい。」と言って引き止めた。

私はフライロッド片手にいつものハヤ釣りバッグ、膝上までのフェルト底の長靴。A君はワイシャツに学校指定のネクタイ、制服のズボン。耳にはイヤホン。外せよそれ、と言って外させた。

私よりでかくなったA君を見上げて、今日のハヤ釣りの首尾を話した。「今日は番長が三連続だったぜ。」と。A君の反応は、「ふうん。」だった。なんだよと思って、先週釣った尺イワナのことを言っても、「ふうん。」。

前はキラキラした目で「すげえ!」と驚いてくれたんだけど。

次に会った時、今度はA君の好きそうな話題────、YouTubeで人気の釣りの動画のネタを振ってみた。若い人はそういうのが好きだから。するとその動画を彼も観てはいた。が、面白いと思う視点がまるで違う。埋めようと言葉を重ねるほど溝が深まる。

つい私の口から「お前の言ってること、全然分かんない。」と本音が出た。A君は黙ってしまい、橋を北の側へ去っていった。背中が冷たかった。

そんなだから、正直最近のA君と会っても楽しくない。向こうも私以上に楽しくないと感じてるのは肌でわかる。それって悲しいものだ。だって園児、小学生、中学校までの頃は、お互いあんなに楽しかったはずなのに。

なぜだろう。なぜ話が合わないんだろう。なぜつまらないんだろう。こっちとしてはけっこう悩んで考えた。でもわからなかった。

今日の朝、ハッと気づいた。

17歳の私が、50過ぎの私と話が合うわけない。むしろ話したくない。なんなら会いたくない。

そりゃそうだ。あたりまえだ。

そう気づいたら、気持ちが楽になった。

2013年の風景。中年にとって8年前はつい昨日だけど子供にとっては前世紀。

・・・

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