N君との会話 その2「カブラー斉藤氏の本についてご意見募集」

N君が言った。「カブラー斉藤さんの単行本って、どうなっているんですか。」。
「フライの雑誌」の読者の方々からも時々同じことを聞かれる。「フライの雑誌」誌上での「カブラー斉藤の本」の最初の出版予告からはや1年以上が過ぎてしまい、普通だったらとっくに呆れられて忘れられてもいい頃なのに、いまだに覚えてくれている方がいるのだ。

先日の「死病発覚かも」事件のときに、私は「ああこれで、カブラーの本も出せないままになっちゃうのか。」と心底から哀しかったのだった。世間的になんのバリューもないカブラー斉藤の本を出そうなんて版元は我がフライの雑誌社以外にありえない。もっと言えば、あの面倒な性格のカブラーと長年つきあって、「フライの雑誌」へ曲がりなりにも人気連載を続けてきてもらえたのは、私にしかできない「いい仕事」だったと思う(そのわりには彼は私について第79号でずいぶんひどい書き方をしてくれたが)。

数は多くなくても価値観を同じくする仲間と知り合えて、ひとつのことを面白いねと言い合える、そんな関係性が楽しくてうれしいがために、マイナーな雑誌作りを続けてきている私としては、N君のような気持ちのいい男から、私が面白いと思っている相手のことを気にかけてもらえるのは、最高にありがたい。こんな瞬間のために、日々がんばっているわけだ。

あんまりうれしかったので、「えー、N君、カブラー本が出たら読んでくれるの。」とちょっと甘えてみた。私の顔はにやけていたことだろう。「もちろんです、楽しみにしてますよ。」。うれしいなあ。そこでフッと、ふだんはあまり聞かないことを聞いてみた。「でもさ、カブラーの本、売れると思うかい?」。N君ちょっと考えて、「うちの店で10冊売れるかなってとこですか。」。…じゅ、じゅっさつ。「ええ、正直言って、全国で300冊売れるか売れないかじゃないですか、ははは。」。

この<正直言って>というのはN君の口癖だ。彼がそう言うときは本当に自分の心へ正直に言っている。しかもこと釣り関係に限れば、N君の「正直」な予想や批評は、これまで外れたことがないのである。

いかに我がフライの雑誌社が人情と根性を看板にしている版元だとはいえ、全国で300冊はいかにもまずい。本当にまずい。せめてもう少し売れてくれないと、冗談抜きでフライの雑誌社は即死である。この出版不況の世の中で、しかも斜陽産業と言われる釣り業界の端っこの、か細い塀の上をよろよろふらついていた我が社は、カブラー本で決定的にトドメを刺されるということなのか。まじめに考えてしまった。

――さて、せっかくこういったインタラクティブなブログで発信しているわけなので、この記事を読んでくださっている皆様にお願いです。じつはカブラー本については、すでに大まかな骨子はできていて、素敵なカバーデザインも上がっており、あとは書き下ろし作品を待つばかりになっています。編集としては、毒気の背後にポエティックが漂う味わい深い一冊になるという自信があります。こんな本絶対他では読めません。しかし、そんなわけで私どもはただ今不安でいっぱいです。ひょっとして、私たちがやろうとしていることは、世の中の皆様のニーズとかけ離れてしまっているのでしょうか。

ここはぜひブログ読者の皆様の忌憚のないご意見を賜りたいと思います。自分は読んであげるよ、はもちろん、こういう内容ならいいんじゃないの、はありがたいですし、やめといた方がいいって、でもかまいません。コメント欄に何でもひとこといただけますでしょうか。どうぞよろしくお願いします。

11 comments on “N君との会話 その2「カブラー斉藤氏の本についてご意見募集」

  1. フライパパ

    2008/2/9 at 07:57

    フライの雑誌、毎号楽しみに読んでます(立ち読みではありません)(笑)

    カブラー氏の熱狂的ファンではありませんが、新刊楽しみにしてますよ。 あらゆるものを敵に回す、あのカブラー氏の勇気ある文章に期待します!
    本家のフライの雑誌が読めなくなると困るので新刊買います(苦笑)

  2. 仙川二郎

    2008/2/9 at 08:26

    あたたかいお声がけをありがとうございます。そうですか、大丈夫ですか。

  3. ここらでも5冊は確実ですね(笑)
    元スーパーカバー(というのかどうかわかりませんが)としても期待しています。
    釣りの基本原則、放浪、彷徨、流浪、漂泊のイメージが漂う本を期待しています。

  4. 仙川二郎

    2008/2/10 at 00:19

    これで6冊(も)ご支持をいただきました。なんか行けそうな気がしてきました。

  5. カブラー斉藤氏のひょうひょうとした書きっぷりは読んでいて引っ張り込まれます。引き込まれる、ではなく 引っ張り込まれるという感じです。
    カブラーマジックとでも言えそうな文章が、一冊どっぷりのディープな本、楽しみにしています。

  6. 買いますよ。

    斉藤さんの記事も毎号楽しみにしてます。

  7. 仙川二郎

    2008/2/11 at 08:15

    色々なご意見をありがとうございます。カブラー氏との打ち合わせによると、単行本用の書き下ろし作品は意外や意外、石坂洋次郎の青春小説みたいになりそうな予感もするんです。しかし締め切りを半年以上過ぎてもいまだ完成せず。

  8. 予約はしないけど買います。

    近所のショップで買います。

    ショップで入庫しているのを横目で確認してからマテリアル物色

    会計寸前にさりげなくマテリアル類と一緒にレジに出す予定です

    今イメトレ中です。

  9. 仙川二郎

    2008/2/11 at 21:29

    おお、購入者にレジ前でのイメトレを強いる本というのもすごいです。中学生の頃に近所の文房具店で「週刊プレイボーイ」を買っていたときの異様なドキドキ感を思い出しました。

  10. 出たら買うつもりです。

    予約しないと出ないなら、まわりの仲間で予約しますけど…

    あぁ… 一冊2万円とかだったらどうしよう… 汗
    新装版とか出ないですよね…

  11. 仙川二郎

    2008/2/12 at 09:59

    おー。カブラー本の2万円超えは、奥多摩で尺ヤマメを50連発するより可能性低いと思いますので、ご安心ください。そんな価格になったら300冊どころか3冊もぜったいムリな予感です。それにしても新装版って…。

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